研究課題/領域番号 |
20K20786
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
山下 喜代美 東京福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (80438754)
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研究分担者 |
先崎 章 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20555057)
橋本 由利子 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (30343453)
櫻井 恵美 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (50760097)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 安寧支援 / 尊厳の保持 / 特別養護老人ホーム / 高齢者介護 / 介護理論 / 自立支援 / 介護福祉士の思考のプロセス / 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ / 介護実践 / 半構造化インタビュー / 介護福祉士 / 尊厳 / 要介護高齢者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、要介護高齢者が最期まで尊厳をもって生活できるようにするための新たな理論として、「『自立支援』から『安寧支援』へのパラダイムシフト」を生成することを目的とする。 1.「安寧支援」の概念創出:因子探索研究として特養入所者と特養介護福祉士への半構造化インタビューを行い、M-GTAの手法を用いて分析する。 2.安寧支援を具体化し、支援方法を考案する。 3.理論の確立:安寧支援の考え方と具体的な支援方法について、介護福祉士を対象とした研修会を開催する。研修会終了時に研修内容に関する評価や意見を質問紙を用いて調査する。これらの意見を踏まえ「『自立支援』から『安寧支援』へのパラダイムシフト」を確立する。
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研究実績の概要 |
2021年に行なった特別養護老人ホーム(以下特養)に勤務する介護福祉士へのインタビュー調査データをM-GTA手法に則って分析し、そこから得た概念、結果図を論文にまとめて、東京福祉大学・大学院紀要に2023年に発表した。表題は「特別養護老人ホームにおける自立支援の一形態としての安寧支援 ―入居者のできることであっても手伝うに至る思考のプロセスの概念化―」である。次に、前述の結果で得られた概念について、それぞれの介護の視点と留意点をまとめて同紀要に発表した。表題は「『安寧支援』の介護の視点と留意点」である。これにより、本研究の目的である「安寧支援」の概念を創出することができた。 2023年度は、「安寧支援」の批判的検証を目的として、特養に勤務経験のある介護福祉士へのインタビュー調査を実施した。インタビューデータは、内容分析に基づいた質的記述的研究デザインとして分析し、逐語録を作成した後,共通性を検討しながら,コード,サブカテゴリー,カテゴリ―を作成してまとめた。この結果を考察して日本介護福祉学会に投稿し、現在査読結果待ちである。これにより、「安寧支援」を批判的に検証することができ、「安寧支援」導入時の懸念事項である自立支援の妨げとなる安易な寝かせきりや介護職員の都合による過度な介護等を防ぐための示唆が得られた。 また、2021年に実施した特養入居者2名のインタビュー調査をまとめ、2023年9月に日本介護福祉学会大会で発表(「特別養護老人ホーム入居者の思いに寄り添った介護―2事例の検討」)し、その後論文としてまとめ、茶屋四郎次郎記念学術学会に投稿し、現在査読結果待ちである。 以上のことから、本研究の目的である「自立支援から安寧支援へのパラダイムシフト」の理論の生成、そして「安寧支援」の具体的な支援方法の考案の最終段階まで到達できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、特別養護老人ホーム(以下特養)の介護福祉士、入居者を対象とした研究である。2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、研究開始当初から遅れが生じていた。当初予定していた対面でのインタビュー調査は、オンラインによるインタビュー調査となった。それでも感染対策の煽りを受けて特養は多忙を極め、介護職員のインタビュー時間を確保することも難しい状況にあった。さらに特養入居者は、難聴の方も多く、オンラインでは会話がうまく進まないこと、また安全確保の観点からインタビュー中は常時介護職員が付き添うことが必要であり、計画通りに進めることができなかった。 「自立支援から安寧支援へのパラダイムシフト」の理論生成、「安寧支援」の具体的な支援方法の考案にむけて、自立支援との関係性の明確化、自立支援の妨げとなる安易な寝かせきりや介護職員の都合による過度な介護などを避けるための批判的検証が必要となった。そのため2023年度には、再度特養介護福祉士へのインタビュー調査を実施した。 その後、研修会を開催する予定ではあったが、インタビュー調査に期間を要したことと、秋~冬の時期は新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ等の感染者の増大が懸念されたため、研修会は春以降の開催とすることを考えた。 現在、当初の計画(最終年度)にある特養介護福祉士を対象とした研修会を開催する準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
「自立支援から安寧支援へのパラダイムシフト」の理論の生成、そして「安寧支援」の具体的な支援方法の考案にむけて、研究計画書最終年度に予定していた特養勤務の介護福祉士を対象とした研修会の開催に向けた準備を進めている。研修会のプログラム、研修会で使用するテキストの作成を行っているところである。 この研修会は、7月に予定しており、案内状の作成、送付先の選定を行っている。研修会では、参加者と質疑などを通して積極的にデスカッションできるようにする。また、研修会終了時には、アンケート調査を実施し、参加者の意見を広く吸い上げられるようにする。 研修会参加者の意見を安寧支援に反映させることで、特養で受け入れ可能な「安寧支援」の理論、具体的な支援方法を構築する。この「安寧支援」の理論、具体的な支援方法については、英語、中国語に翻訳したものも作成する予定である。介護業界は、人材不足が続いており、外国人に頼らざるを得ない状況にある。そのため、「安寧支援」の考え方を介護分野に周知していくためには外国人にも理解してもらえるように、英語版、中国語版が必要であると考える。高齢社会の最先端にある日本の介護のあり方を世界に発信するためにも、翻訳することに意義があると考える。
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