研究課題/領域番号 |
20K20865
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
服巻 豊 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (60372801)
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研究分担者 |
黒山 竜太 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (30533468)
船橋 篤彦 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (40432281)
KABIR RUSSELLSARWAR 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 助教 (00881260)
右田 啓介 福岡大学, 薬学部, 教授 (10352262)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 臨床動作法 / だ液サンプル / 心理指標 / 微量生体内物質 / ストレスマネジメント / 心理学的介入 / GABA / グルタメート / プレ・ポストデザイン / シングルケースデザイン / 心理的介入 / GAGA / 末梢性生体反応 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,ストレスマネジメント介入の前後における末梢性生体反応(生理指標),ネガティブ感情(POMS2など)及び自律神経活動との関連を検証することにより,ストレスマネジメント介入法の効果発現メカニズムを明らかにする。このことにより,ストレス反応を示すHPA系(ストレス反応活性化経路)と同時に,末梢性中枢制御機能としてのストレス耐性賦活経路の存在を明らかにする。本研究は,基礎研究と臨床研究を架橋した実験パラダイムを用いたストレス研究であり,これまでのストレス研究の体系や方向を大きく変革・転換させ,ストレス社会へのエビデンスのあるヘルスプロモーションの提唱を可能とし,国民の心の健康に寄与できる。
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研究実績の概要 |
本研究成果としては,研究1として Single Experimental Case Design Study (SECDS)を用いてABAデザイン,ABABAデザインによる臨床動作法介入効果検証のための事例研究を行った.4名によるABAデザインでは,介入(B)前後のベースライン(A)とのPOMS2,MAIAによる心理指標のネガティブ指標は低下し,ポジティブ指標は上昇する結果が得られた.しかし,だ液による生理指標の微量性体内物質の量は一貫しておらず,介入による影響としては認められなかった.生体内物質として興奮性神経伝達物資であるグルタミン酸及び抑制性神経伝達物質であるγ‐アミノ酪酸(GABA)と他の生体内物質との比率を計算しても介入の影響としての一貫したデータは得られなかった. 研究2としてプレ・ポストデザインによる臨床動作法介入の効果研究を大学生317名を対象として実施した.心理指標として気分状態を示すPOMS2,自尊感情尺度,コロナ禍における自分を大切に思う程度を測る状態セルフ・コンパッションを測定した.生理指標は研究1と同様にだ液サンプル中の微量生体内物質を測定した.プレ・ポストにおける指標値の比較をした結果,ポストにおいてプレよりPOMS2において敵意,抑うつ,疲労,緊張・不安などのネガティブ感情の有意な低下,活気というポジティブ感情の有意な上昇が認められた.また,状態セルフ・コンパッション及び自尊感情はポストにおいてプレより有意な上昇が認められた.317名中60名の協力を得ただ液データ分析では,13種類のアミノ酸は全てポストにおいて増加していた.中でもアスパラギン,セリン,グルタミン,ヒスチジン,グリシン,トレオニン,アルギニン,タウリンの6アミノ酸は1.5倍以上増加しており,末梢反応性ストレスマネジメントの効果指標としての微量生体内候補物質である可能性を示唆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究においては,心理指標を用いて臨床動作法を用いたストレスマネジメントプログラムの効果検証を行い,同時に生理指標としてだ液サンプル内の微量生体内物質の測定を行った.集団研究の成果として,臨床動作法を用いたストレスマネジメント効果としての心理指標と同期して微量生体内物質の変動が見られた.特に6つのアミノ酸の変動は介入後において高まっており,ストレスマネジメント効果としてのネガティブ感情の低下のみならず,抗酸化作用を有するグリシン,疲労回復効果を有するアルギニン・タウリンの増加を促すことを示唆した.しかし,事例研究では一貫したデータが得られておらず,より詳細な検討が必要である.本研究の成果は,精神的健康のみならず,身体的健康のためにも臨床動作法を用いたストレスマネジメントプログラムの効果が見いだせる萌芽的成果が得られたものと考えられる.また,今後の臨床心理学および生理学・医療・福祉・教育の他分野においても心理指標だけでなく,だ液という簡便な指標を用いたストレス軽減の効果測定の道を開くものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間は,新型コロナウイルス感染症拡大の時期と重なり,だ液サンプルの採取での研究遂行は困難を極めた.今後は,だ液サンプル採取による13種類のアミノ酸の測定データを蓄積していくこととする.同時に,ストレスマネジメントプログラム介入後において1.5倍以上の増加を示した6つのアミノ酸にしぼって安静状態,運動負荷状態,臨床動作法介入前後ならびにストレス状態などの基礎データを蓄積し,また,グリシン,アルギニン,タウリン等は,サプリメントでの摂取が可能であり,外部からの摂取による環境の影響についても検証していく.このことにより,心理指標と同期したストレスマネジメントの効果指標としてのだ液サンプル中のアミノ酸の有用性について検証する.
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