研究課題/領域番号 |
20K20870
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
国里 愛彦 専修大学, 人間科学部, 教授 (30613856)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 再現可能性 / オープンサイエンス / 事前登録 / データとコードの共有 / メタ分析 |
研究開始時の研究の概要 |
心理学の再現性の危機は,心理学の根幹を揺るがすものであり,早急に対応が必要な問題である。事前登録,報告ガイドラインの遵守,データとコードの共有が求められるようになってきたが,それらの導入には技術的なハードルもある。そこで,本研究では,クラウドベースのツールを導入する方法やそれらを簡単に利用可能にするソフトを開発することを目的とする。さらに,それらのツールを用いて,追試や新規の研究を実施し,その論文発表とともにツールの利用方法を解説したマテリアルも公開しツールの利用を促す。本研究は,再現可能性の高い方法で収集されたデータを蓄積し,それに基づいて議論する方向に心理学を変化させることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では,心理学研究を(1)事前登録,(2)データ取得,(3) データ解析,(4)データ活用の4段階に分けた上で,それぞれに必要なRパッケージを開発し,それらを用いて臨床心理学に関連した追試実験もしくは新たな認知課題を検証する実験を実施することを目的としている。 (1)事前登録については,昨年度に論文を発表しており(国里・土屋, 2022; 国里・遠山, 2021),本年度は取り組まなかった。 (2)データ取得については,jsPsychとJATOSを組み合わせることにした。JATOSでのデータ収集を前提としたjsPsychテンプレートをGitHubで公開し,それをRで準備するRパッケージを作成した。なお,このRパッケージは,jsPsychRmdパッケージとして作成したが,昨年度からpsyinfrパッケージに統合した。また,電子ラボノートについてもeln4Rmdパッケージとして作成していたが,こちらも昨年度にpsyinfrパッケージに統合した。本年度は作成したpsyinfrパッケージの更新を行った。また,作成したタスクを公開し,他の研究者が活用できるタスクリポジトリも開発した。 (3) データ解析については,心理学者が活用しやすいDockerイメージの開発とメンテナンスに取り組み,データ解析から論文までを可能とするjpaRmdパッケージを作成した。APA形式での文献リストを作成することができる。jpaRmdやDockerについては,日本心理学会のチュートリアルワークショップにて普及活動につとめた。 (4)データ活用については,オープンデータ化に必要な手順について整理し, 日本認知・行動療法学会第48回大会,日本テスト学会第20回大会のシンポジウムにおいて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,心理学研究を(1)事前登録,(2)データ取得,(3) データ解析,(4)データ活用の4段階に分けた上で,それぞれに必要なRパッケージを開発し,それらを用いて臨床心理学に関連した追試実験もしくは新たな認知課題を検証する実験を実施することを目的としている。過去3年での進捗状況は以下のとおりである。 (1)事前登録について,AsPredicted用のR Markdownテンプレートパッケージを作成し,事前登録について解説した論文を複数発表した。 (2)データ取得については,jsPsychを用いた実験課題をRで作成するjsPsychRmdパッケージを作成した。電子ラボノートについては,eLabFTWの日本語化とRMarkdownによる電子ラボノートのeln4Rmdパッケージを作成した。その後,JATOSを用いたデータ収集をするのに合わせて再構成し,jsPsychRmdパッケージやeln4Rmdパッケージを統合してpsyinfrパッケージを作成した。psyinfrパッケージ1つで複数の作業に対応でき,GitHubとの連携した電子ラボノートの保管も可能になった。また,jsPsychとJATOSベースの認知課題や質問紙を共有するためのタスクリポジトリの開発を行った。しかし,タスクリポジトリの枠組みの設計に時間がかかり,コンテンツはまだ十分ではない。 (3) データ解析については,心理学者が活用しやすいDockerイメージの開発とメンテナンスに取り組み,データ解析から論文執筆までを可能とするjpaRmdパッケージを作成した。2年目と3年目にかけてjpaRmdは日本心理学会の指定する形式での文献リストの作成などの機能が向上した。 (4)データ活用については,オープンデータ化に必要な手順について整理し,複数の学会のシンポジウムにて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,心理学研究を(1)事前登録,(2)データ取得,(3) データ解析,(4)データ活用の4段階に分けた上で,それぞれに必要なRパッケージを開発し,それらを用いて臨床心理学に関連した追試実験もしくは新たな認知課題を検証する実験を実施することを目的としている。(1)~(3)については必要なRパッケージの開発が終了しているが,タスクリポジトリの開発に多くの時間がかかってしまい,タスクリポジトリのコンテンツの準備が不十分なのとメタ分析ツールの開発がまだ残っている。 そこで,次年度は以下に取り組む。 (1)~(3)のすでに開発したRパッケージやDockerイメージについては,バグを減らすとともに,随時メンテナンスを行うととに,心理学者向けのワークショップを予定している。すでにユーザー向けのドキュメントは作成しているが,オンラインマテリアルなども充実させる。 本課題に取り組むことで課題や質問紙を他の研究者が利用しやすい形で共有するタスクリポジトリの重要性がわかり,その開発にも取り組んだ。タスクリポジトリ自体は開発できているが,そのコンテンツがない状態になるので,最小限のコンテンツを作成し,必要に応じてデータ収集を行う。 既存のオープンデータに対してインタラクティブに効果量を統合するRもしくはShinyパッケージなどの開発に取り組む。
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