研究課題/領域番号 |
20K20880
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分11:代数学、幾何学およびその関連分野
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
阿部 拓郎 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (50435971)
|
研究分担者 |
沼田 泰英 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (00455685)
鍛冶 静雄 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (00509656)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 超平面配置 / 対数的ベクトル場 / 特性多項式 / 整数根 / 交差格子 / メビウス関数 / 逆特性多項式 / 逆交差格子 / 特性多項式とその根 / 分解定理 / 制限写像 / 有向グラフ配置 / Shi配置 / Ish配置 / ポアンカレ多項式 / ランダム生成アルゴリズム / 機械学習 / 局所化と制限 / 対数的微分形式 / オイラー制限射 / Ramanujan Machine |
研究開始時の研究の概要 |
超平面配置はベクトル空間中の超平面の有限集合である。その重要な不変量にポアンカレ多項式がある。これは組み合わせ論・位相幾何・代数幾何的な意味を持ち、これらの研究手法が交錯している。この多項式が整数根を持つケースが存在し、代数的に良い配置の場合は寺尾の分解定理からその解釈がある。本研究ではその解釈を広げ、寺尾の分解定理の組み合わせ論や位相幾何的な意味付けを与え、代数・幾何・組み合わせ論を融合する。
|
研究実績の概要 |
本年度は、コロナ禍がある程度の落ち着きを見せてきたため、海外への渡航が部分的に可能となった。そこで、2022年11月にMax Wakefield氏をアメリカはアナポリスに、研究分担者の沼田泰英氏とともに訪問し、超平面配置の特性多項式の根及び関連する話題に関して研究打ち合わせを一週間ほど実施した。Wakefield氏はマトロイドと呼ばれる、線形空間の抽象化に関連した組み合わせ論及び幾何学の研究において近年顕著な業績を上げており、その観点から特性多項式の根に関する議論を発展させようと考えた。 この議論の中で、特性多項式を超平面配置からマトロイドへ拡張し、その根が整数である場合を考察することで、本研究に新しい視点を得ることができた。更に、特性多項式を定める組み合わせ構造である交差格子の上下をさかさまにして得られる逆交差格子にメビウス関数を定義しそこから得られる、いわば逆特性多項式という組み合わせ論的不変量の考察を行うことで、元の特性多項式の整数根の意味に対して、新たな視点からアプローチすることができた。本研究は非常に深く新しい内容を含んでおり、現在もこの三名で研究を遂行中である。 また、やはり三次元の場合が基本的な問題であるとの観点から、三次元配置の根が整数である場合のみならず、整数根を持つパートに定数分だけずれているケースの、そのずれている定数部分の意味についてより深く考察することも行った。その結果として、自由配置と自由配置に挟まれた自由でない配置たちの根(の類似物)の挙動が代数的に統制できる可能性が出てきた。これは現在研究が進行中であり、来年度以降も注力する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた計算機実験に苦戦しており、理論的なアプローチに若干偏っているところがあるため、やや遅れていると判定した。しかしながら理論的なアプローチは、逆特性多項式の概念を導入するなどして、新しい視点を盛り込みつつかなり成功しているところもあるため、このまま理論的なアプローチを推進しつつ、計算機的アプローチも更に注力することで後れを挽回したい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はまず、若干遅れている計算機的アプローチを、研究分担者の鍛冶氏及び沼田氏とともにさらに推し進め、結果を得ることを目指す。 具体的には、研究手法を絞るアプローチである。現時点で進捗が大きいアプローチは、ランダム生成アプローチであるため、沼田氏、鍛冶氏という分担者二名の研究リソースをこの一点に集約させ、突破を図る。必要であれば、彼ら二名を補佐するリサーチ・アシスタントを雇用するなどして、計算機側面からのアプローチに対してより強力な体制で臨むことで、成果を得ることをもくろむ。 また、ここまでうまくいっている理論的なアプローチについては、二つの方策を現在検討中である。一つ目はWakefield氏、沼田氏と研究を進めている逆特性多項式の考察である。この整数根が、元の特性多項式の整数根とどのような関係にあるかを探ることで、交差格子と逆交差格子の構造論に踏み込み、そこから位相幾何的な情報を取り出すことで研究を進めてゆく。これについてはWakefield氏らを訪問あるいは招聘するなどして、研究を強力に推進する。 もう一つは、代数構造が自由に近い、いわゆるSPOG配置と関連した根の研究である。三次元配置は自由でなければめったに整数根を持たないが、因数分解をすれば整数根パートに定数を加えたものとして書ける。この定数の意味付けを、SPDG理論を用いて代数的にまず行い、そこから位相幾何・組み合わせ論へフィードバックすることで、定数から整数根の意味を探索する。
|