研究課題/領域番号 |
20K20884
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分12:解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白井 朋之 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (70302932)
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研究分担者 |
河原 吉伸 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 教授 (00514796)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 行列式確率場 / 機械学習 / 行列式点過程 |
研究開始時の研究の概要 |
行列式確率場は複数の電子の反発的な振舞いを表現するために導入された確率モデルでしたが,現在では数学の様々な場面であらわれる重要なモデルであることがわかっています.一方機械学習はコンピュータを用いて大量のデータを学習することにより,分類や予測を行う効率的に工学的技術です.本研究は,これまでなかった機械学習の視点から行列式確率場を見直す数学的な研究を行うとともに,その機械学習への応用を目指すものです.
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研究実績の概要 |
完全グラフ上の全域木の総数の決定はケーリーに遡り、行列式を用いたビネ・コーシーの定理や行列・木定理が重要な役割を果たす。この計算と接続行列のユニモジュラー性から、一般にグラフ上の一様全域木はすべて行列式確率場となることが知られている。また、完全2部グラフの全域木の総数はScoinによって求められている。全域木はサイクルのない連結グラフとして特徴つけられるが、サイクルが複数ある場合の連結成分の同様の数え上げの問題も重要で、Wrightによって完全グラフの場合は研究されている。カッコーハッシングの関連で完全2部グラフの場合については、特にユニサイクルと呼ばれる場合には考察されていた。薮奥・蓮井らとサイクルの個数が一般の場合について、指数型母関数を用いる方法で偏微分方程式系を導き、その方程式を解くことによりその係数の漸近挙動を求める研究を実施し、現在論文を執筆中である。Ghosh・三好と共同研究で行なった、三角格子の摂動によって得られるランダムな格子が適当な分散パラメータの時にギニブル確率場に近いことをパーシステント図間の距離および最近接間距離のヒストグラムに関する距離の比較により得て、それをワイヤレスネットワークのSINRの問題に応用した論文が出版された。行列式確率場の基本形は正定値行列をL-行列として、添字の部分集合に対応する主小行列式の値に比例する確率として定義されるが、最近歪対称行列を加えても非負の確率を定めるという事実が示されて、そのクラスでの行列式確率場の機械学習に必要な基礎的な性質について研究してきた。特に、歪対称行列を加えた場合の行列式確率場が元の正定値行列の場合に比べて、どれくらい確率測度の表現力が上がっているかを調べ始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行列式確率場は正定値対称行列をパラメータ空間にもつ確率分布族であるが、そのパラメータ集合を正定値行列と歪対称行列の和のクラスまで拡張して表現能力を高め、さらにその確率分布族に対して機械学習する際に、その表現力がどれくらい増しているかについて実験的な考察を行った。一方、2部グラフ上のサイクルの個数を固定したときの連結グラフの個数の数え上げの問題には進展があった。これらのことより、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の状況を踏まえて、まず具体的な計算機実験をさらに追加で実施するとともに、確率単体上の分布を与えてそれと行列式確率場の平均距離に関する計算機実験とともに、理論的な考察も行う予定である。また、パラメータ空間におけるランダム行列の固有値の問題は数値実験を行い、理論的な研究にも着手したがその点はまだ十分でない。可能ならば、この点についても引き続き考察していきたい。
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