研究課題/領域番号 |
20K20894
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 和也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90302760)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 中性-イオン性転移 / 非相反伝導 / 電荷秩序 / 電荷グラス / 輸送現象 / 有機導体 / 分子性固体 / 核磁気共鳴 / Thoullesポンピング |
研究開始時の研究の概要 |
金属、半導体、微細加工系、超伝導体等に特有な電荷の輸送は、それぞれ、物理学研究の舞台であるとともに、産業の基盤でもある。従って、新しい電荷輸送機構の実現は、基礎科学と応用科学の枠を越えた波及効果をもたらす。本研究では、絶縁体の電子を集団的に移動させる全く新しい電荷輸送法の実現に挑戦する。その原理は、1983年にThoulessが提唱したトポロジカル電荷ポンピングである。局在電荷をポテンシャルに乗せて集団的かつコヒーレントに運ぶというものである。我々は、これまでに行ってきた分子性物質の研究から得たヒント、すなわち、電荷-格子秩序系に内在する複数の秩序変数を循環制御することによりその実現に挑む。
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研究実績の概要 |
トポロジカル励起が伝導を担うと考えられる中性-イオン性転移物質であるTTF-CAの中性状態、イオン性状態において圧力下のゼーベック係数の測定を継続して行った。前年度までと同様に、ゼーベック係数と伝導度測定を同時に行った。これによりゼーベック係数と伝導度、それぞれ別々に測定したときに生じる印加圧力のずれの問題を回避するようにした。 ゼーベック係数の測定に加え、強電場によるポーリングをおこないそこでの伝導度測定を行った。ポーリングに関してはパルス高電場を利用することおよび試料の温度をモニターすることで発熱によって相転移温度を超えないようにしたり、パルス電場より低い電場を相転移温度より上の温度から印加して転移をまたぐようにしたりした。交流電流を印加しロックインアンプで検出する方法と、直流電流を用いた方法で行った。 その結果、非相反伝導現象を見出した。この非相反伝導の起源は必ずしも自明でないことから二つの試料でおこなったところ非相反伝導現象はどちらの試料でも観測された。一方でその振る舞いに異なる点もあった。この振る舞いが異なる原因として印加圧力の違いによって同じイオン性相であっても状態に違いがある可能性や試料への端子付けの違いなどによる可能性もあるのではないかと考えられる。 電荷秩序、電荷ガラス状態をしめす三角格子系物質であるq-(BEDT-TTF)2X(Xはアニオン分子)のラマン測定による実空間イメージングを行った。この物質はXによって三角格子性が変化する。その結果、三角格子性の違いによる電荷分布の違いを観測したが、これは電荷ガラスの古典-量子クロスオーバーに起因する可能性がある。X=RbZn塩では結晶化温度以上では、電荷秩序/電荷ガラス界面に特異な針状構造が生じており、この針の幅は高温ほど太くなっていることが分かった。 これらの結果を学会などで発表し議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたパルス電場下の測定もできるようになってきている。さらにこの結果、非相反伝導という当初、予想していない結果も得られた。 イメージングに関しても三角格子性と電荷分布を結びつけるデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
非相反伝導に関しては二つの試料で観測できいるがその振る舞いに異なる点もある。印加圧などの違い、端子の付け方の違いなどによる可能性もありえるので条件を変えながら測定を行うことで、実験的要因の影響を排除していく。 これまでの結果を踏まえサウレスポンピングへの挑戦も続ける。
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