研究課題/領域番号 |
20K20904
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
内橋 隆 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (90354331)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2020年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
|
キーワード | 超伝導 / スピントロニクス / 原子層結晶 |
研究開始時の研究の概要 |
ラシュバ型SOCを有する2次元電子系ではスピンと運動量の方向はロックされるため、電流を面内に流すことでフェルミ面の中心位置がシフトすると、系全体ではスピンが蓄積し、スピン流を形成する(エーデルシュタイン効果)。本質的に同じ現象は従来型のs波超伝導体に対しても起こることが理論的に予言されており、本研究ではこのような超伝導エーデルシュタイン効果を世界に先駆けて実証する。従来の研究の妨げになってきた表面界面での結晶性の乱れの問題を解決するため、本研究では原子1-2個程度の厚さの2次元超伝導体結晶に注目する。超高真空環境においてエーデルシュタイン効果の観測を行い、スピン偏極率の最大値を実験的に求める。
|
研究成果の概要 |
エーデルシュタイン効果の起源であるスピン軌道ロッキング現象についてインジウム原子層を対象とした詳細な解析を行った。面内臨界磁場から求めたスピン散乱時間と試料伝導度から求めた電子弾性散乱時間がほぼ等しくなることから、スピン反転を伴う動的なスピン軌道ロッキング効果がこの系で本質的な役割を果たしていることを発見した。これは、従来の理論で予想されていた静的なスピン軌道ロッキング効果とは全く異なる機構である。また、原子層からできた10um幅の微細伝導チャンネルの作製に成功し、STM測定・電気伝導測定の両方を可能とする装置の開発を行って最低到達温度0.4 K、最高印加磁場9Tを達成した。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
ラシュバ型スピン軌道相互作用をもつ2次元超伝導体の面内臨界磁場は通常のパウリ限界を大きく超えることが、研究代表者の研究によって明らかにされていたが、その詳細な機構は未解明だった。今回スピン運動量ロッキングの動的な効果により時間反転対称性を保持したままスピン反転率が異常に増大することがその原因であることを明らかにした。この性質は、近年注目されている原子層厚さの2次元超伝導体の特徴的な性質の一つとして理解できる。原子層超伝導体は強い磁場や磁気相互作用と共存できるため、将来量子機能性材料として応用されることが期待できる。
|