研究課題/領域番号 |
20K20915
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
田口 光正 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 次長 (60343943)
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研究分担者 |
須郷 由美 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員 (90354836)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ペプチド / ナノ粒子 / 腫瘍 / 診断 / 量子ビーム架橋 / 放射線架橋 / すい臓がん / 量子ビーム |
研究開始時の研究の概要 |
すい臓がんは非常に悪性度の高い腫瘍で、早期診断と治療技術の開発が切望されている。申請者らは、腫瘍追跡型ペプチドの化学構造を維持したまま微粒子化し、さらにRIを担持することで、現有ペプチド薬剤を凌駕するナノ薬剤を着想し、量子ビーム架橋ナノゲルと、高感度な検出や細胞殺傷能力を有するRIを利用した、腫瘍追跡型ペプチドナノゲル薬剤を創出する。ペプチドと水のみを原料とし、量子ビーム架橋によりペプチドの特性を保持したまま微粒子化したペプチドナノゲルを作製する。このナノゲルに放射性Cuを担持することで、より選択的に、より安全に、より高感度なイメージング・治療薬剤を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では、量子ビームの照射効果を最大限利用して、悪性度が高く、難治性のすい臓がんの早期診断とスクリーニング、さらに治療が可能な腫瘍追跡型ペプチド薬剤の開発を目的としている。量子ビームは、細胞毒性を有する架橋剤などを使用することなく、ペプチドに架橋構造を形成することができる。これまでヒスチジン(His)とグリシン(Gly)からなる数種類のペプチドを合成し、量子ビーム照射による架橋反応を利用して、ナノ粒子を作製した。さらに、PANC-1細胞(ヒト膵臓癌由来細胞株)を用いた培養試験において、細胞内に取り込まれ蓄積される様子を観測してきた。 本年度は、昨年度までのペプチドに対し、細胞に対する接着性の高いアミノ酸配列アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(Arg-Gly-Asp)と、分子を電気的に中和するためのグルタミン酸(Glu)を組み込んだ新規ペプチドHis-Glu-His-Gly-His-Arg-Gly-Aspを設計、固相合成した。0.1 wt.%のペプチド水溶液へ室温にてγ線を照射したところ、ピーク粒径50 nm程度のナノ粒子が得られた。このナノ粒子の収率は5 kGy(kGy=J/g)で90%であった。ナノ粒子の粒径は、PBS中において経時変化が小さく、高い粒径安定性を有することが分かった。さらに、ナノ粒子は生分解性を保持していることが分かった。ナノ粒子を蛍光標識し、PANC-1細胞を用いた培養試験を行った結果、細胞に対する毒性が無く、細胞内部へ取り込まれ集積することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞接着性配列を付加したペプチドを固相合成し、量子ビーム照射によるナノ粒子化に成功している。得られたナノ粒子の粒径安定性や生分解性を評価するとともに、蛍光標識後にすい臓がん細胞内に集積することを確認している。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
新規ペプチドの合成やナノ粒子化、腫瘍細胞集積などに成功している。引き続き、基材となるペプチドの組成や長さ、置換基、表面電荷などをパラメータとして腫瘍集積性の向上を目指すとともに、マウスを用いたin vivo試験など、腫瘍追跡型ペプチド薬剤の開発に向けた特性改善を進めていく予定である。
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