研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究の目的は、独立成分分析の堆積学への適用法の新規開発である。独立成分分析は1994年に開発された統計解析法で極めて新しい解析法である。そのため、この解析法が地球科学において、どれほどのポテンシャルがあるのか、いまだ十分に理解されているとは言い難い。これまでに、独立成分分析を地球科学に応用した例は決して少なくはないが、その全てが構成成分を推定することにとどまっており、構成成分の『化学組成』を推定する研究には至っていない。本研究では、独立成分分析を堆積岩に適用し、構成鉱物の『生命必須元素や酸化還元に関連する微量元素組成』を推定する方法を開発し、堆積岩の化学組成を用いた古環境解読手法を確立する。
2023年度、私たちがこれまでに分析した原太古代の堆積岩(イスア表成岩帯の縞状鉄鉱層と炭酸塩岩、ラブラドル・ヌリアック表成岩類の縞状鉄鉱層、炭酸塩岩および砕屑性堆積岩、ヌブアギツック表成岩帯の縞状鉄鉱層とチャート)の化学組成を用いて、独立成分分析を行った。独立成分分析から各構成物の端成分を推定する際に重要となるのは各端成分の基点となる平均値をどこに置くかである。単純な独立成分分析では絶対量は決まらず、平均からのずれの元素比のみが決まる。そのため、平均が原点の場合は得られた元素比は、そのまま端成分の化学組成に変換することが可能だが、原理的に平均値が原点ということはあり得ないので、平均値を適切に決めることが、端成分の化学組成をより正確に決めることにつながる。そこで、今年度は各地域において、異なる岩相を組み合わせて、一方の岩相が平均になるようにして、他方を決めるようなプログラムを組んだ。その結果、より定量的に各成分の元素組成比を決めることができるようになった。具体的には、縞状鉄鉱層では鉄酸化物に加えて、シリカ鉱物、炭酸塩鉱物および複数の砕屑性堆積物のそれぞれの成分の化学組成が得られた。また、炭酸塩岩では、炭酸塩鉱物に加えて、鉄酸化物、シリカ鉱物および砕屑性堆積物の成分が得られた。また、独立成分解析はカオスで、計算ごとに少しずつ計算結果が異なる。そこで、モンテカルロ法を取り入れて大量に計算し、統計的に処理した。期間を通じ、独立成分分析による堆積岩の構成成分のそれぞれの化学組成を定量的に推定する取り組みを行い、端成分の微量成分元素の推定を可能にした。加えて、ヌブアギツック表成岩帯に産するチャートと縞状鉄鉱層の全岩の主成分元素、微量成分元素および炭素同位体、ヌリアック表成岩類の硫化鉱物の微量元素組成とイオウ同位体および原生代の炭酸塩岩の微量元素組成の分析を行った。
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