研究課題/領域番号 |
20K20945
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三好 由純 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (10377781)
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研究分担者 |
松本 洋介 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (20397475)
江副 祐一郎 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (90462663)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | ジオスペース撮像 / X線 / 太陽風磁気圏相互作用 / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
地球周辺の宇宙空間であるジオスペースは、太陽風と地球磁場との相互作用によって形成されており、磁気圏や電離圏などのプラズマ領域から構成されている。従来、ジオスペースは人工衛星の「その場」での観測によって研究が進められてきた。しかし、他の天体とは異なり、ジオスペースを可視化するための手段が知られていなかったため、ジオスペースの全体像を可視化することは不可能と考えられてきた。本研究では、この不可能と考えられてきたジオスペースの可視化に挑戦し、X線によってジオスペースの可視化を実現する可能性を追求し、その定量的な評価と将来のジオスペース撮像衛星計画に向けたシミュレーションを行う。
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研究実績の概要 |
地球周辺の宇宙空間であるジオスペースは、太陽風と地球磁場との相互作用によって形成されており、磁気圏や電離圏などのプラズマ領域から構成されている。従来、ジオスペースは人工衛星の「その場」での観測によって研究が進められてきた。しかし、他の天体とは異なり、ジオスペースを可視化するための手段が知られていなかったため、ジオスペースの全体像を可視化することは不可能と考えられてきた。しかし、太陽風に含まれている多価の酸素イオンが地球の外圏大気(ジオコロナ)と電荷交換反応を行う際に放射されるX線が発見され、そのX線撮像を通したジオスペース撮像に向けた人工衛星計画等が進んでいる。 本研究では、このX線によるジオスペースの可視化を実現する可能性を追求し、その定量的な評価を行うために、独自の電磁流体力学計算にもとづくジオスペース全体のシミュレーションを実施した。さらにジオコロナのモデルと組み合わせた計算によって、O7+イオンがジオコロナと電荷交換反応を起こす際に放射されるX線の計算を行った。その結果、昼側磁気圏シース領域で強いX線の放射が確認され、このX線放射を観測することで昼側磁気圏の可視化が可能であることが示された。さらに、太陽風のプラズマβが低い場合には、このX線放射が、昼側のリコネクション領域からのプラズマフローの運動を反映していることが明らかになり、将来、昼側磁気圏のリコネクション領域の撮像が可能になる可能性が指摘された。これらの結果は学会、ならびに学術雑誌(Matsumoto and Miyoshi, Geophs. Res. Lett., 2022)で報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定してた電磁流体力学によるジオスペース全体の計算、ならびにジオコロナモデルと結合した軟X線放射計算に成功し、X線放射の定量的な見積を可能とするコードの作成に成功した。太陽風の変化に伴うジオスペースのプラズマ分布や磁場形状の変化の計算を可能にするとともに、電荷交換反応によるX線放射領域の分布とその時間変化の計算にも成功した。さらに、太陽風の状況を変化させた計算を行ったところ、太陽風のプラズマのβ値が低い際には、昼側磁気圏のリコネクション領域から放出されるジェットの可視化が可能になるという予想外の結果が得られた。過去の太陽風のデータの分析から、このような状況は、一定の割合で起こることも明らかになった。これは、太陽などの他の天体で見られているリコネクションの可視化がジオスペースでも実現できるという可能性を示すものであり、今後のジオスペース研究ならびにリコネクション研究に大きな意義を持つものである。以上を踏まえて、当初の計画以上に伸展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
開発したコードを用いて、様々な太陽風におけるジオスペースの応答、さらにX線放射の変化を調べていく。マッハ数およびプラズマのβ値を中心に太陽風の条件を変えたシミュレーションを実施し、どのようなときに軟X線強度が強くなるかを調べていく。特に太陽風動圧の上昇に伴う磁気圏界面の地球側への移動が軟X線でどのように観測されるか、また惑星間空間磁場が南向きの際に、カスプの場所がどの程度移動するかなどについての検討を進めていく。さらに、打ち上げが予定されている人工衛星による軟X線観測を想定し、人工衛星の軌道や、X線望遠鏡を視野を考慮しながら、実際に近い状況をふまえた軟X線放射の視線方向積分の計算を実施し、仮想衛星による観測模擬を行う。このような観測模擬を、様々なパターンで実現することによって、昼側磁気圏シース領域やカスプ領域の観測に適した衛星の位置や視線方向の検討を進め、人工衛星による観測戦略の立案にも貢献していく。
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