研究課題/領域番号 |
20K21026
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
権代 由範 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (00553520)
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研究分担者 |
佐藤 徹雄 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (70369924)
迫井 裕樹 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30453294)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | コンクリート / 耐凍害性 / 気泡組織 / 高吸水性高分子 / 粒度分布 / 吸水能 / 気泡径分布 / 高吸水性ポリマー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、化学混和剤による空気連行に依存しない寒冷地コンクリートの実現を目指し、高吸水性樹脂[SAP]を混合した“非空気連行型耐凍害性コンクリート”を開発する。一般に耐凍害性は、コンクリート中に適切な径の気泡を均一に分散させる事で付与されるが、この気泡を厳密に制御する事は極めて難しい。一方、SAPは粒度や分散性を製造段階で制御可能であり、コンクリート中に分散させたSAPは、吸水した水を放散した後に残存空隙として気泡の如く振る舞う。従って、耐凍害性向上に有効な粒度分布を持つSAPを選択的に混合する事ができれば、理想的な空隙構造(耐凍害性)を有する新たな寒冷地コンクリートの製造が可能になる。
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研究実績の概要 |
本研究は,化学混和剤による空気連行及び空気量管理に依存しない寒冷地対応型コンクリートの実現を目的に,高吸水性高分子(以下,SAP)を添加した非空気連行型耐凍害性コンクリートの開発を目指すものである。 今年度は,SAPの吸水特性およびコンクリートを用いた凍結融解試験を実施した。まず,昨年度に引き続き実施したSAPの吸水試験では,セメント溶液(W/C:5.0)および合成セメント濾液に加えて,W/C:0.6の練り混ぜ水を吸引濾過したセメント溶液を試験液として吸水試験を行った。その結果,試験液種によって吸水挙動に違いはあるものの最大吸水量には大きな差は生じないこと,吸水後の放散挙動に差異が生じることが確認された。具体的には,W/C:5.0のセメント溶液を用いた場合,他の試験液を用いた場合に比べ,吸水後の放散現象が顕著に見られた。この要因については,次年度,各試験液のイオン分析を行い,放散現象との関連性を検証する。次に,コンクリートによる凍結融解試験では,モルタルを対象とした試験と同様に,SAP添加による凍結融解抵抗性の向上が確認された。しかし,粒径の大きいSAPを添加した場合(本実験ではD50:400μm使用),凍結融解抵抗性の発現に一貫性が見られなかった。この要因としては,練り混ぜ時間が影響している可能性が示唆された。現時点での推察は次の通りである。大径のSAPは,吸水後さらにその粒径が大きくなるため,凍結融解抵抗性の向上に寄与する気泡径の範囲外となる。練り混ぜ時間が長い場合,SAPは練り混ぜ中に粉砕されることで粒径が小さくなり,凍結融解抵抗性が向上する。一方,練り混ぜ時間が短い場合はSAPの粒形はほぼ変化せず,凍結融解抵抗性の向上効果は見られないとするものである。次年度は,練り混ぜ時間を実験水準とする凍結融解試験を実施し,上記の推察を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載した研究実施計画をベースに,随時研究計画の見直しを行いながら検討を進めてきたものの,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による昨年度までの研究の遅延が尾を引き,全体的な研究の進捗状況としての遅れは否めない。しかし,今年度はコンクリート試験体を対象とした凍結融解試験を実施し,SAPの添加による凍結融解抵抗性の向上効果を確認することができた。一方,一部の実験ケースにおいて整合性をもたないデータが得られており,実験の再現性や影響因子と思われる指標との相関性といった観点から,現段階において説明のできない部分があり研究成果として纏めるまでには至らなかった。これらの経緯から,再現実験を実施し,それらの結果を改めて検証する必要があると判断し「補助事業期間延長承認申請」を行い、事業期間の延長が認められている。事業期間の延長が認められた次年度は、再現実験の方法や分析手法を改めて精査し,追加の検証実験を行うことで事象の解明に努めるとともに、これらの成果を踏まえ、学会参加および論文投稿を行いたいと考えている。 以上より、今年度実施した再現実験の不整合や実験方法および分析手法の精査の必要性を踏まえ、現段階における研究の進捗度を自己評価すると、「やや遅れている。」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度同様,当初研究計画の評価・改善を行いながら研究の遂行に努める。本研究の計画を整理すると,【STEP.1:現行の空気連行型コンクリートの評価及び分析】,【STEP.2:非空気連行型耐凍害性コンクリとの開発】,【STEP.3:非空気連行型耐凍害性コンクリートの材料特性の検証】の3 STEPとなる。これらの検討で得られた知見を総括し,新たな課題の抽出および実験計画へのフィードバックを繰り返すことで,提案しようとする非空気連行型耐凍害性コンクリートの基本性能の向上を目指す。 次年度は,まず,初年度から実施してきた【STEP.1】および【STEP.2】に関する再現実験や追加実験の継続によるデータの蓄積を図る。具体的には,SAPの吸水試験における試験液種と吸水・放散挙動の関係を明らかにするとともに,今年度の実験により示唆された練り混ぜ時間と凍結融解抵抗性の関連性について再実験・再検証を行う。また,メインとしては,【STEP.3】に関する追加実験を行う。現時点で非空気連行型耐凍害性コンクリートの強度評価や耐凍害性評価,気泡組織測定などの一連の性能評価試験は実施しているものの,基本性状の向上を図るうえでデータが十分とは言えない。そのため,これらの性能評価試験についてさらに実験を重ね,再現性の検証を行う。これまでに得られたデータを整理し,次年度実施する実験データとの比較検討を行うことで改善点や問題点が抽出されれば,その都度追加検証を行い,耐凍害性をはじめとする基本性状の向上を図る。さらに,SAP添加コンクリートの実用化を考えるうえで,汎用的な調合設計手法の確立は必須となる。SAPの添加方法(添加量の算出方法や適正な練り混ぜ方法など)やSAPの添加がコンクリートのフレッシュ性状に及ぼす影響を再整理する。
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