研究課題
挑戦的研究(萌芽)
膨大な未利用熱の効果的な削減・有効利用に向けて、高度な熱制御技術の確立が期待されている。一般的な物質と異なり、温度上昇と共に熱伝導率が急激に増大する物質があれば、自発的に低温で熱を蓄えて高温で熱を急速に放散する伝熱制御材料を実現できるが、熱伝導率を大きく変化させる物質は無かった。本研究では、応募者が見出した「ナノ周期構造転移」を示す新材料を利用して、従来よりも10倍以上大きく熱伝導率を変化させる熱伝導率変調材料の開拓に挑戦する。熱伝導率制御比を飛躍的に高める新たな熱伝導率変調材料の設計指針を確立し、高度な熱制御技術の発展に貢献する。
層状化合物のナノ周期構造転移を利用した巨大熱伝導率変調材料を開発した。高温相を室温凍結させる非平衡合成により2次元(2D)構造SnSeと3次元(3D)構造PbSeの固溶体(Pb1-xSnx)Seを合成し、x=0.5において2D構造と3D構造の直接相境界を形成した。温度変化によって2D構造から3D構造へ可逆的に転移させ、熱伝導率を3倍変化させることに成功した。半導体(2D構造)から金属(3D構造)へ変化することで電気伝導度が6桁増加し、電子の熱伝導率への寄与が大きくなる一方で、2D構造では層構造が格子振動による熱伝導を阻害するため、結果として熱伝導率の変化が大きくなるというメカニズムも解明した。
温度変化による層状化合物のナノ周期構造転移を利用して、熱伝導率が大きく変化する材料(Pb0.5Sn0.5)Seを開発した。実用化に向けては、相転移温度を向上させること、熱伝導率の昇温曲線と降温曲線のヒステリシスを小さくすることなど、解決すべき課題はあるが、さまざまな材料系や結晶構造系の固溶体に展開することでさらなる性能向上が期待できる。今回の研究で得られた、結晶構造を人為的に制御して熱伝導率を変化させるという全く新しいアプローチは今後、結晶構造や化学結合が異なるさまざまな無機結晶系においても、高度な熱制御が可能な材料開発につながると期待される。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (35件) (うち国際学会 26件、 招待講演 2件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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