研究課題/領域番号 |
20K21115
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
木下 幸則 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (10635501)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 磁気力顕微鏡 / ナノ磁性体 / 透磁率 / 高周波導波 / ナノ磁性粒 / インピーダンス / マイクロ波 / 磁気共鳴 / 複素分解 / 磁性ナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
磁化の歳差運動である磁気共鳴現象は超高速・低電力磁気メモリ等の次世代磁気デバイスの実現に不可欠で重要な力学的現象であり、高周波の磁場に対する共鳴磁化の追従成分と遅れ成分からなる複素透磁率がデバイス性能を決める。本研究では、磁性体へのマイクロ波導波を用いて磁気的な力を電気的に補足する手法を開発し、ギガHz帯での磁性体の透磁率を複素量で捉えてナノレベルの空間分解能で可視化する磁気イメージングを実現させ、種々の配置状態にある磁性ナノ粒子の磁気共鳴の動力学を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、探針へのマイクロ波の導波が可能な磁気力顕微鏡を用いて、導電性磁性探針と磁性体試料の間に働く磁気力と試料の磁気共鳴に由来する電気的な反射信号を同時にマッピングする新しい磁気イメージング手法を開発することを目的とする。本年度は、前年度に遂行した探針励振系とマイクロ波導波系を現有の顕微鏡に組込み、マイクロ波導波型・磁気力顕微鏡を組み上げた。具体的な実施項目は以下の通りである。
(1)マイクロ波パワーの調整 本手法では磁気力を電気的に検出するためにマイクロ波を導波した磁性探針と磁性体試料の間に磁気力を作用させた状態でネットワークアナライザを用いて反射係数(Sパラ)を計測する。研究開始前のシリコン製カンチレバー(長さ数100μm)を用いた予備実験では、Sパラ計測用のマイクロ波の熱によって大きな共振ドリフトが発生したが、この対応として昨年度から水晶振動子の適用を開始した。水晶振動子はSiカンチレバーと比べて大きく(長さ約6㎜)、バネ定数も数100倍高いため、熱による位置ドリフトや共振シフトの影響が小さい。実際に、磁気力とSパラ計測の感度を上げるためにマイクロ波のパワーを目一杯上げても、これらは十分に小さいことを確認した。
(2)マイクロ波動波型・磁気力顕微鏡の組み上げ 市販の大気中原子間力顕微鏡に、水晶振動子の両音叉を励振させる加振機構とマイクロ波導波機構を併せ持つ水晶振動子ホルダーと、光てこ法をベースにした自作の変位検出系を組込み、マイクロ波動波型・磁気力顕微鏡を組み上げた。レーザー照射系と変位検出を設置するステージを大元の径14cmから40㎝×40cmへと大幅に大型化し、外場印加や種々の大きさの試料の観察に対応させた。一方で除振台に載せる質量が増加するので振動特性は劣化するが、新たにバネによる減衰機構を加え、水平・垂直方向共に大元の状態と遜色のない振動伝達特性を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、マイクロ波の動波によって磁性探針の磁気共振を誘起しつつ、これに変調を加え、探針の機械的共振の変調として補足する手法を採用する。これを実現するために、水晶振動子の梁部に、マイクロ波伝送用のパターンを描いたり、極細の導線を接着したりする。この状態で変調マイクロ波を導波すると、探針の共振振動に変調は狙い通りに出現するが、磁性体との相互作用下では、変調が力学的な磁気相互作用によるものか、あるいは水晶の圧電性による振動かの識別ができない問題が判明した。この対処法としては、水晶の圧電による振動とのクロストークが起きないマイクロ波用電極パターンの考案が必要となるが、学内での実験室の移動・引越し作業も重なり、年度内の遂行状況は代替案の有限要素法などによるシミュレーションに留まり、計画していた電気的な磁気イメージングまで到達できなかった。これらの理由により進捗状況は遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
22年度の進捗停滞の最大の要因は、変調したマイクロ波が作る力学的な相互作用の変調と水晶振動子の圧電性による変調振動のクロストークである。23年度は、この対策として磁気力による導波路パターンの最適化を最優先で行い、磁気力の電気的イメージングにつなげる。手順としては、有限要素法シミュレーションを用いて、変調したマイクロ波の導波によって生じる音叉型梁内部の応力分布と、生じる振動モード、および各モードの振動振幅を網羅的に調べる。現状では、導波路の信号線と接地線が作る電場による振動が、磁気力の検出に用いる振動モード(試料表面の法線方向)と平行と推測されるので、これを直交方向にして磁気力信号に混入しないパターン配置を割り出す。これが困難な場合は、平行方向でも相対的に混入率が低いパターンを探る。電極パターンの位置によっては音叉構造の対称性が崩れて力検出感度(共振特性を表すQ値)が下がると予想されるが、イメージングへの移行を最優先する。
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