研究課題/領域番号 |
20K21149
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
研究代表者 |
杉山 純 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 特任研究員 (40374087)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | イオン拡散 / リチウム / 電池 / ミュオンスピン回転緩和 / 負ミュオン / リチウム電池 / 拡散 |
研究開始時の研究の概要 |
電池等の機能発現に重要な「固体内のイオンの拡散運動」をミュオン素粒子を用いて調べる研究である。特に正のミュオン素粒子と負のミュオン素粒子の両者を使い、その性質の相違を活用して、試料中で拡散するのがミュオンではなくイオンであることを確認しながら、イオンの拡散係数を測定する。各種電池材料の測定から、イオンの拡散を律する要因を抽出し、より良い電池材料の開発につなげる。
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研究実績の概要 |
Liイオン電池の正極材料は、層状岩塩構造、スピネル構造、オリビン構造に大別される。これらについてはmu±SRで核磁場揺らぎの温度依存性を測定し、拡散種がmu+ではなくLi+であることを確認した。この知見を基に、オペランドmu+SR測定によりLixCoO2中のDJを求めたところ、反応面積を規定しやすい薄膜試料の電気化学測定結果とほぼ一致する結果を得た。 Li電池材料のmu-SR測定では、ミュオンLi原子(mu-Li)からの信号が不可避的に含まれる。そこで、Li金属単体のmu-SRスペクトルを室温から5Kまでの温度範囲で測定し、横磁場回転スペクトルが緩和しないことを確認した。これはLi核スピンとmu-スピンの超微細結合磁場が大きすぎて、周囲のLi核による双極子磁場を隠してしまうためと思われる。また、大気中で不安定なLi金属でも安定してmu-SR測定できる測定容器も開発済みである。 種々のミュオン原子の崩壊により発生する異なる寿命のmu-信号からなるスペクトルの解析法については、理論式を導出し[Muon Spin Spectroscopy: An Introduction (Oxford, 2022)]、さらに実験結果に適合する解析法も提案した。これらの実験と解析結果を2022年8月にパルマ(イタリア)で開催されたmuSR2020国際会議で発表した。 ミュオン原子近傍の局所歪みが核磁場へ及ぼす影響については、核磁場を形成するのが双極子磁場なので、影響は少ないと予想している。これは、近接原子間の交換相互作用が重要な電子磁性の場合と比べると大きな相違である。しかしより定量的に影響を見積もるため、ミュオン誘起局所歪み計算の専門家と共同研究を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英国施設のアップグレードがコロナの影響で1年以上遅れた。このため2022年秋に実施予定だったLi電池用固体電解質材料のmu±SR実験が2023年夏以降に延期された。それを除けばLi電池用材料の測定はほぼ終了し、その成果も順調に公開されている。
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今後の研究の推進方策 |
英国施設での固体電解質の実験により、Li電池材料に関する一連のmu±SR実験はほぼ終了する。結果を論文として公表する。
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