研究課題/領域番号 |
20K21172
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水谷 泰久 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (60270469)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 分子ヒーター |
研究開始時の研究の概要 |
ヘムタンパク質はタンパク質ヒーターとして高いポテンシャルを持っているものの、実用化のためには解決すべき課題がある。それは、ヘムから放出された熱を溶媒に放出するうえで、ヘムと溶媒の間にあるタンパク質部分が熱伝導のボトルネックになっている点である。タンパク質部分の熱伝導率は水の10-20%しかないため、ヘムから放出された熱によってタンパク質部分は過渡的に高温になってしまう。このため、ヘムからの繰返しのエネルギー放出によって、タンパク質の熱変性が起こりうる。この問題を解決するために、タンパク質部分の熱安定性の向上に加え、その熱伝導性の向上を図る。
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研究成果の概要 |
本研究では、ヘムのもつ高速の無輻射緩和を利用して高効率の分子ヒーターとして働くタンパク質(タンパク質ヒーター)を開発した。高度好熱菌由来のヘムタンパク質シトクロムc552がもつ高い熱安定性と高速の無輻射緩和を示すヘムの光熱変換を利用した。ラマン分光法を用いた温度計測の結果、シトクロムc552はタンパク質周辺温度を最大で5.1 K加熱することがわかった。今回観測したヘムタンパク質による温度上昇は、温度感受性タンパク質を駆動し、生体操作を行うのに十分であることが示された。また、タンパク質ヒーターシグナル配列を付加することによってオルガネラを特定して細胞内を局在加熱できる可能性が示された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
タンパク質ヒーターは細胞操作における研究ツールとして高い将来性を持っている。ヘムタンパク質を用いたタンパク質ヒーターは、遺伝子として細胞中へ導入され、外部からの分子導入を必要としない。したがって、細胞内の分子だけで生合成可能なタンパク質ヒーターは細胞の熱操作技術として高い有用性を持つ。また、神経細胞の操作技術として光を用いたイオン濃度の操作技術が注目されている。タンパク質ヒーターはこれに対して、光を用いた細胞内の熱操作技術を創出するこのように、タンパク質ヒーターの創成は細胞操作の全く新しい手段を提供し、生細胞を舞台とした化学の理解と応用に広く寄与するであろう。
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