研究課題/領域番号 |
20K21173
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 雅由 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (80252568)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | エキシトン / 開殻性 / 分子集合系 / ダイナミクス / 幾何構造 / コヒーレンシー / 量子ダイナミクス / 超分子系 |
研究開始時の研究の概要 |
分子集合系等の超分子系のエキシトン(電子-正孔対)ダイナミクスは、エネルギー・電子移動等の動的現象において重要な役割を果たしているが、個々の分子が開殻性をもつ場合や、系の幾何構造が量子コヒーレンシーやエキシトンポピュレーションのダイナミクスに与える影響は未解明である。本研究では、様々な幾何構造をもつ開殻超分子系において、量子ダイナミクスシミュレーションを実行し、これらの効果を解明を目指す。これらの結果は、開殻超分子系のエキシトンダイナミクスの新しい制御法の原理の発見や量子情報デバイスの基本物質設計に繋がり、学術体系を大きく変革・転換させる潜在性を有しており、挑戦的・萌芽的な研究課題である。
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研究実績の概要 |
本年度は、弱開殻性をもつペンタセンからなる環状集合系のSFダイナミクス(SFレートや相関三重項対(TT)収率)の構造依存性について検討を行った。まず、J型およびH型リング状会合体(N-mer)モデルにおけるSFでは、J型会合体モデルのSFレートはNの増加に伴い単調に減少するが、H型会合体モデルのSFレートはNのパリティに応じて異なる変動挙動を示し、H型5量体モデルでは最大のSFレートを示すことがわかった。これらの特徴は、断熱状態間の相対緩和因子の解析と、環状の集合体モデルの点群対称性によって説明されることがわかった。これらの結果から、J型とH型の中間領域のモノマ-配置をもつ環の反転に対して鏡映対称を破るslip-stack型環状集合系についてより大きなSFレートの増大が期待されることから、そのモデルを構築し、回転角依存性とサイズ依存性について検討した。8量体では、SF速度は、α = 20-30°の範囲に速度のピークを生じ、その後SF速度が減少して低SF速度・高TT収率の領域を経て、35°から急激な上昇に転じる傾向を示した。これらの傾向は、Frenkel励起子状態(FE)、電荷移動状態(CT)、相関三重項状態(TT)の間の電子カップリングの傾向、及び断熱状態のエネルギーや電子構造により説明が可能であることがわかった。現在、結果を整理し、論文を執筆中である。また、SFダイナミクスの非対角密度行列のコヒーレンシーの影響を調べるために、外部振動電場を印加するSFダイナミクスのシミュレーションプログラムの作成も行った。次年度より、外部振動電場がSFダイナミクスに及ぼす効果の検討を始める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
幾何構造がSFダイナミクスに及ぼす効果については、環状集合系において、環の反転に対して鏡映対称性をもつか否かによる各断熱状態の成分の違いを解析的に明らかにし、それに基づく相対緩和因子の違いからSFダイナミクスに与える幾何構造の効果の解明に成功した。これは幾何構造の対称性がSFに与える効果についての初めての研究であり、当初の計画以上に進展している。また、非対角密度行列のSFダイナミクスに与える効果の検討のための振動電場印加のプログラムの整備も予定通り進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で提案された環状集合系の対称性とSFダイナミクスの関係に基づき、SFダイナミクスを制御できるさら多様かつ複雑な幾何構造の提案を行う予定である。また、外部振動電場の印加によるSFダイナミクスの変化を解析することで、非対角密度行列のコヒーレンシーがSFダイナミクスに及ぼす影響についても検討する。
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