研究課題
挑戦的研究(萌芽)
ミトコンドリア内部で転写される転移RNA(tRNA)への転写後修飾は、tRNAが機能を持つために重要な過程であるため、修飾の欠損は一般に疾患の要因となる。今回、tRNAへの疾患関連点変異により、点変異部位とは異なる、本来正常な配列と言える部位に新規修飾が獲得されることを見出した。この新規修飾について生合成機構や特に遺伝暗号解読における役割の解明を目指す。得られる研究成果は、既往の修飾「欠損」疾患とは全く逆の、修飾「獲得」疾患の初めての例証になる可能性があるだけでなく、疾患のメカニズムの一端が明らかになることで、疾患の予防や克服に向けた応用へとつながることも期待している。
疾患変異を持つヒトミトコンドリアtRNA-Metにおける当該新規修飾について、構造解析の結果推測された化学構造に基づき、関連する修飾酵素の過剰発現や組み換え体を用い、tRNA点変異に依存して細胞内の修飾生合成レベルに影響する結果と、試験管内での再構成反応が進行する結果を得た。新規修飾構造によるコドン解読能を解析するためのリボソーム結合実験をアンチコドンステムループ(ASL)で実施したところ、結合能が根本的に低い問題があった。最終的に反応条件の最適化を進め、今後の結合実験を行う基盤が整った。
疾患点変異に伴い変異部位と異なる位置に新たに獲得されたRNA修飾は、新規な化学構造を持っていた。このことはヒトにおけるRNA修飾の構造や機能の多様性を表していると言える。当該修飾は疾患を亢進する役割を持つと考えらえることから、今回特定された生合成経路を阻害することが、点変異に起因する疾患の治療や予防につながるといった応用が機体される。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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