研究課題/領域番号 |
20K21269
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
廣田 毅 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (50372412)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 概日時計 / ケミカルバイオロジー / ケージド化合物 / 細胞間相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は概日リズムの周期を変化させる新規化合物を発見して鍵となる制御機構を明らかにしてきた。多細胞から成る概日時計システムの理解に向けて解明すべき重要課題が、細胞間の相互作用である。本研究では時計調節化合物のケージド誘導体を用い、狙ったタイミングに狙った細胞で概日時計を定量的に操作する新技術を生み出す。これを概日リズムの1細胞イメージングに応用し、細胞間相互作用の時空間的な解析に挑戦する。
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研究実績の概要 |
概日時計は分子から個体の各階層を時間・空間的に統合して多様な生理現象の日内リズムを生み出す。申請者はケミカルバイオロジーの手法を応用し、概日リズムの周期を変化させる新規化合物を発見して鍵となる制御機構を明らかにしてきた。多細胞から成る概日時計システムの理解に向けた次のステップとして解明すべき重要課題が、細胞間の相互作用である。これまでに時計調節化合物longdaysinをもとにケージド誘導体を開発し、時間的な精密制御を実現した。本研究ではこのようなケージド時計調節化合物を用い、狙ったタイミングに狙った細胞で概日時計を定量的に操作する新技術を生み出す。これを概日リズムの1細胞イメージングに応用し、細胞間相互作用の時空間的な解析に挑戦する。本年度は1細胞レベルの概日リズムを測定する顕微鏡システムにおいて、ケージド化合物の活性化に必要な紫色光の照射条件の検討を進めた。培養細胞を用いた実験では光照射による細胞毒性の問題を避けることができなかったため、マウス組織の培養系を用いた検討を開始した。あわせて、時計タンパク質CRY1に作用する光スイッチ化合物を用いた条件検討を行っている。並行して、CRY1とCRY2の両方に作用する化合物KL001の誘導体として開発されたSHP656がCRY2に選択的に作用することを見出した。CRY2-SHP656複合体の構造と機能の解析から、ゲートキーパーと名付けたトリプトファンの向きがアイソフォーム選択性に重要な役割を果たすことが判明し、CRYの機能制御の理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概日リズムの1細胞レベルでのイメージングシステムを用いてヒト細胞を培養し、ケージドlongdaysinを投与して概日リズムの空間的な制御を試みるために、局所的な光照射条件などの検討を行った。解析を進めた結果、この実験系では光照射によって起こる細胞毒性の問題を避けることができないことが判明したため、時計遺伝子のレポーターマウスから採取した組織を用いて検討を行うこととした。さらに、ケージドlongdaysinに加えて、光スイッチ化合物の使用を検討している。この化合物は時計タンパク質のCRY1に選択的に作用し、その効果が光によって可逆的に変化する。 これと並行して、CRYを標的とする化合物SHP656について、その作用機序を明らかにした。細胞レベルの機能アッセイと結晶構造解析を組み合わせることで、SHP656がCRY2に選択性を示し、そこにゲートキーパーと名付けたトリプトファンのアイソフォーム依存的な方向性が関与することを見出し、当初の計画以上の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
時計遺伝子のレポーターマウスから採取した組織を用い、概日リズムの1細胞レベルでのイメージングシステムにおいて光照射の条件検討を進める。行動リズムを支配する概日時計が存在し、強固な概日リズムを示す脳視床下部の視交叉上核のスライス培養、および末梢組織のスライス培養を用いる。ケージドlongdaysinやCRY1に作用する光スイッチ化合物を投与し、局所的な光照射によって概日リズムを空間的に制御することを目指す。SHP656などの解析から得られた、化合物によるCRYの調節機構に関する分子的な理解を、光による機能制御に活用する。概日リズムの局所的な操作を可能にすることにより、光を照射した部位と照射しなかった部位の概日リズムの比較から、細胞間相互作用を解析していく。
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