研究課題
挑戦的研究(萌芽)
ジベンゾフラン環化合物と結合したpreQ1リボスイッチの立体構造に基づき、転写抑制活性が向上する第2世代の合成化合物を取得する。これまでに、ジベンゾフラン環化合物を基盤にして誘導体を合成した。今後、合成化合物の遺伝子発現抑制活性を測定する。また、リボスイッチとの複合体結晶を作製し、その構造を解析する。得られた複合体構造を基盤にして誘導体を設計する。このサイクルを繰り返し転写抑制活性が高い合成化合物を取得して、新規な抗生剤候補物質を作製する。また、in vivoにおける合成化合物の活性評価系を構築する。さらに、リボスイッチが遺伝子の発現を調節するしくみを解明するために機能構造解析を推進する。
本研究では、ジベンゾフラン環化合物の化学構造を基盤にして誘導体を合成した。誘導体のin vitroにおける転写終結活性を、RNAポリメラーゼを用いた転写アッセイにより評価した。その結果、2種類の誘導体の活性が親化合物と比較して上昇していた。次に、これら誘導体とPreQ1リボスイッチとの複合体の結晶構造を分子置換法により決定した。その結果、PreQ1が結合する部位に合成化合物が結合していることが明らかになった。また、リボスイッチで保存された塩基とのスタッキングにより結合が安定化されていることが分かった。さらに、合成化合物とリボスイッチとの間に水素結合も形成されていることが明らかになった。
感染症に対する医薬品は低分子医薬が主流であるが、多剤耐性菌が出現し問題となっている。この克服には新規な抗生剤の開発が不可欠である。本研究では、細菌RNAを標的とした新規薬剤の創製を目指して実験を実施した。対象としたRNAは細菌に特有のPreQ1リボスイッチであり、PreQ1の生合成に関わる遺伝子の発現をPreQ1濃度に応じて調節する。PreQ1はtRNAのアンチコドン1字目に存在する修飾ヌクレオシドの一つであるキューオシンの前駆体であり、正確なタンパク質の合成に重要である。従って、PreQ1リボスイッチと結合する合成化合物を取得すれば、RNAを標的とした新規抗生剤の開発に繋がると考えられる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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