研究課題/領域番号 |
20K21323
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 石原産業株式会社 中央研究所 |
研究代表者 |
森 光太郎 石原産業株式会社 中央研究所, 生物科学研究室, グループリーダー (40344840)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 生物農薬 / ミヤコカブリダニ / 共生微生物 / マイクロバイオータ / 16S rRNAメタゲノム解析 / カブリダニ / 進化実験 / IPM |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は生物農薬の主要な有効成分である天敵カブリダニを人為的に操作して機能強化する試みのひとつである。昆虫、ダニ類体内の共生微生物は寄主の形質(性、殺虫剤抵抗性など)を変化させている。この現象を逆手に取って、有用形質を持たせた微生物を天敵に人為的に共生化させ、所期した形質を天敵に付与する新技術の確立をめざす。異なる有用形質を有する複数の微生物系統を構築・保管しておき、用途に合わせて共生化し、形質転換することを意図する。つまり、有用形質を持つ微生物をカートリッジ化してオーダーメイドで生物農薬を作ろうという試みである。他の天敵にも転用可能なコンセプトで、新しい分野・技術の創出になると考える。
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研究実績の概要 |
今年度も引き続き天敵ミヤコカブリダニの共生微生物叢を解析した。まず、虫体の部位ごとに細菌叢に違いがあるかどうかを調べることを試みた。人為共生化させるベクターの選択にこの情報は有用である。カブリダニは微小なため、解剖死して部位ごとにサンプルを分けるのが難しい。そこでカブリダニ体表洗浄処理の有無、飢餓処理の有無での細菌叢の違いや糞に見られる細菌叢を比較解析した。その結果、上記処理による細菌叢のOTU数(40から60)や分類群構成割合に大きな違いはなかった。すなわち部位ごとに細菌叢に大きな違いはないと考えられた。 次に、抗生物質処理を施したカブリダニの細菌叢を解析した。抗生物質処理すると、検出されるOTU数は減少し、その細菌叢の多様度も低下した。今回は抗生物質処理時間を24時間としたが、処理時間を増加した場合に細菌叢がどのように変化するか、またホストであるカブリダニにどのような変化が起こるかを調べて、細菌叢の機能も調べる必要がある。 最後に、カブリダニの微生物叢から培養可能な微生物を分離することを試みた。上記のように体表洗浄処理、飢餓処理を施した雌成虫を破砕して細菌用の寒天培地に塗りつけ、培養後に出現したコロニーを回収して16S rRNAアンプリコン解析に供した。他にカブリダニを歩かせた寒天培地上に出現したコロニーやカブリダニの糞自体からもDNAを抽出して解析した。その結果、検出されたOTU数は10から15程度で多様度も小さかった。具体的にはSerratia属、Staphylococcus属などが検出された。これらは処理間、糞内の構成ともよく似ていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微生物叢の解析が進捗した。またカブリダニの微生物叢に培養可能な細菌が存在することを確認し、その分類群も明らかにすることができた。一方、完成には至らなかったが、カブリダニに微生物を取り込ませる手法については、より効率的な吸汁系の構築を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
ミヤコカブリダニの共生微生物叢の解明については、検出された細菌叢の機能の解析を進める。また、部位ごとに細菌叢に違いがないことが示唆されたが、さらに微小な部位ごとに違いがあるかどうか、細菌類の局在を明らかにするなど、さらなる解析が必要と考えている。 培養可能な細菌類については、再現性を確認する。さらに単離して種の同定を試みる。培養方法の検討も必要である。 カブリダニによる大腸菌摂食、観察系の確立と人為淘汰系については、まず、今年度所属先で導入する蛍光実体顕微鏡での観察系を構築する。次に蛍光ビーズを用いてカブリダニが取り込み可能なサイズの特定をする。さらに蛍光タンパク発現大腸菌を取り込ませる実験系とその観察系の構築を試みる。
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