研究課題/領域番号 |
20K21333
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 裕志 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (50553989)
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研究分担者 |
高田 耕児 富山県産業技術研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (40530621)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | リグニン / マイクロ流体デバイス / バイオマス / リグノセルロース / グリーンケミストリー / フロー分離 |
研究開始時の研究の概要 |
リグニンは疎水性芳香族高分子として知られる。長らく3次元網目構造で水不溶性の不定形ポリマーとして扱われ、限られた有機溶媒にしか溶解せず、その利活用の難しさが課題である。本研究では、リグニンを水中で均一分散体として展開し、生化学反応(酵素反応)によるリグニンの分解・修飾・重合反応を探索し、フロー法による分離および反応系を構築する。天然型高分子リグニンを基質として水系で行う生化学反応系の構築は、リグニンの根源的な性質の理解に結びつく。
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研究実績の概要 |
リグニンは疎水性芳香族高分子であり、3次元網目構造で水不溶性の不定形ポリマーであると考えられてきた。植物バイオマスから抽出したリグニンは、ジオキサン、 DMSO/ピリジン、 DMF、 Nメチルイミダゾールなどの有機溶媒に溶解するが、 通常、 水や親水性のアルコールにはほとんど溶解しない。誘導体として、例えばリグニンスルホン酸、 PEG修飾リグニンとすると水溶性を付与できる。アセチル化誘導体はクロロホルムやTHFに溶解できる。近年ではイオン液体による可溶化が注目されている。 最近、我々はリグニンを水中で均一分散体として展開できることを見出した。本研究では、この現象を起点として、詳細な分析と分離法の検討を実施した。
2020年度はリグニンの水中分散条件の最適化、分子構造解析、微粒子分析を実施した。分散条件として、リグニンの濃度と溶液環境を検討した。分散体は光学顕微鏡(明視野、位相差)、および蛍光顕微鏡による形態観察を行った。調製したリグニンの分子構造は2次元NMR法による分子構造解析を実施した。また取得した分散体の粒径分布測定を行った。さらに電子顕微鏡においても観察することに成功した。光学顕微鏡観察は溶液での分散体であるが、電子顕微鏡観察は乾燥体であるため、当初想定していなかったが高分解能に観察することができた。次に、リグニン分散体の微粒子サイズに基づくフロー分離法についても検討を実施し、マイクロ流体デバイスを用いたサイズ分離が可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リグニン分散体の調製に成功し、溶液中での光学顕微鏡、蛍光顕微鏡による観察に成功した。さらに当初計画していなかったが、乾燥体の電子顕微鏡観察にも成功した。リグニン分散体は各種分光スペクトルや粒径分布測定によって評価し、フロー分離にも成功した。以上のことから、コロナウイルスの影響により各種実験の進捗は影響を受けたものの、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
多様なバイオマス種を用いた検討を進める。また、リグニン分散体を用いたグリーンケミストリーへの応用について検討と分析を進める予定である。具体的には、リグニンを水中で均一分散体として展開し、生化学反応(酵素反応)によるリグニンの分解・修飾・重合反応を探索し、フロー法による分離およびin situ反応系を構築する。従来の固液反応を、天然型リグニンを基質とした水系で行う酵素反応系の構築により、リグニンの根源的な性質を考察する。
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