研究課題/領域番号 |
20K21355
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分41:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
桟敷 孝浩 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主幹研究員 (10453250)
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研究分担者 |
耕野 拓一 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20281876)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 薬剤耐性 / 経済疫学 / 養殖水産動物 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、人や動物に抗菌性物質が効かなくなる、薬剤耐性感染症が世界的に拡大している。薬剤耐性菌が、養殖水産動物を介して人に伝播する可能性も懸念されている。日本では2016年に薬剤耐性対策アクションプランを策定し、国内対策の更なる推進とアジアにおける主導的役割の発揮を掲げている。そこで本研究では、経済疫学からのアプローチにより、薬剤耐性問題の要因として考えられる、養殖水産動物の病気への抗菌性物質(治療)とワクチン(予防)に対する、養殖業者の知識不足と故意による不適正使用の存在を定量的に究明し、より望ましい衛生施策を提言する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、台湾とスリランカのエビ養殖を対象として、以下の研究を実施した。 1)台湾のエビ養殖業者に対するアンケート調査から、養殖業者が表明しにくい、抗菌剤に対する知識不足と故意による不適正使用の存在を、それぞれ定量的に解明した。アンケート調査は、コロナ禍にあり海外出張が困難であったため、台湾の研究者からの協力を得つつ、台湾において61サンプルを入手した。データ解析では、養殖業者が表明しにくい、知識不足と故意による不適正使用の存在を明らかにするため、Item Count Technique(ICT)分析(間接質問法)を適用した。分析の結果、①抗菌剤への知識不足による不適正使用に関連して「エビに使用する抗菌剤の効能、用法、用量、使用禁止期間の情報を正確に知らない者」は3.1%と非常に少ないことが推察された。②抗菌剤の故意による不適正使用に関連して「専門家の許可を得ずに抗菌剤を使用する者」は20.8%を占めることが推察された。以上より、台湾のエビ養殖において、抗菌剤への知識不足による不適正使用はほとんど見られず、抗菌剤の故意による不適正使用が疑われる状況を、定量的に示すことができた。 2)スリランカのエビ養殖業者および関係機関等に対する聞き取り調査から、エビ養殖経営の現状把握、抗菌剤の使用実態および制度対応等を明らかにした。スリランカでは、FAOが推奨するBMP(生産管理規範)を導入して、エビ養殖の衛生管理をしていることが明らかとなった。BMPを遵守しなければエビ養殖の免許が取り消しになる。また、抗菌剤は、専門家(獣医師等)の許可のもとで使用する必要がある。その一方、エビ養殖では、抗菌剤を使用せずに、プロバイオティクスの使用が増えつつあるとのことであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、2020年度から2022年度まで、毎年度に、スリランカおよび台湾への現地調査を予定していた(合計6回の現地調査を計画)。しかし、コロナ禍により、2022年度にスリランカへの現地調査を1回実施したのみで、スリランカおよび台湾への現地調査を十分にできていないため、研究が予定通り進捗していない。 これまで海外研究者からの協力を得て、エビ養殖業者へのアンケート調査を実施し、研究成果を挙げてきた。ようやく2022年度の後半から、台湾ではコロナ禍における入国規制が緩和され、スリランカでは入国規制の緩和に加えて、経済危機等に伴う国内情勢も落ち着いたことから、渡航しやすくなったところである。 従って、本研究の実施期間を延長して、研究代表者および研究分担者が海外出張をして研究を推進することで、当初研究計画にある抗菌剤の適正使用による効果を明らかにすることとした。
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今後の研究の推進方策 |
抗菌剤の適正使用による効果の解明のため、スリランカおよび台湾では、海外研究者の協力を得つつ、養殖業者の経営状況の把握、経営収支データの入手、抗菌剤の使用実態および制度対応等について現地調査することが、今後の研究推進課題として残されている。加えて、これまでの研究成果についても、次年度の現地調査を踏まえて成果の高度化を図り、論文を投稿したい。
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