研究課題/領域番号 |
20K21360
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分42:獣医学、畜産学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷本 啓司 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90261776)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | エピゲノム / 精子 / プロタミン / アルギニンメチル化 / マウス |
研究開始時の研究の概要 |
予備検討で見いだした、マウス精子プロタミンのアルギニンメチル化修飾について、その生物学的意義を解析する。 ・プロタミンを抽出・精製し、質量分析によりメチル化部位を同定する。同定したメチル化アルギニンに対する抗体を作成する。 ・メチル化反応の触媒酵素を、in vitro メチル化アッセイにより同定する。 ・抗メチル化プロタミン抗体により、そのゲノム分布を明らかにする。 ・メチル化酵素の精子特異的ノックアウトマウスを作製し、交配により得られる初期胚を用いて、受精直後に精子由来ゲノムにみられる能動的脱メチル化反応と、最初期(1 細胞期)と、その後(2 細胞期)に活性化される遺伝子発現の変化を解析する。
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研究実績の概要 |
近年、ゲノムDNAの塩基配列以外の要素が、親(配偶子)から子へと継承される遺伝情報の担い手となることが認識され「transgenerational epigenetic inheritance」の概念が生まれた。本研究の目的は、哺乳動物の精子ゲノムに豊富に含まれるプロタミン・タンパク質の翻訳後修飾が「エピゲノム情報」として機能し得るのかについて、生化学、分子生物学、発生工学的手法を用いて検証することにある。我々は、大腸菌で過剰発現させたマウス・プロタミン(Prm1とPrm2)とアルギニンメチル化酵素のうちの1種を用いた予備的な生化学実験から、Prm2分子がin vitroで強くアルギニンメチル化修飾を受けることを見いだした。次に、哺乳動物細胞内でのメチル化活性を確認するための実験をおこなったが、おそらく技術的な問題と考えられる理由から、明確なメチル化修飾を示す結果が得られなかった。そこで、in vivoのアプローチに切り替え、マウス精子特異的にCre酵素を発現するマウスと、PRMT1遺伝子がloxP配列で挟まれたfloxed-PRMT1 alleleをもつマウスとを交配し、精子で特異的にPRMT1を欠損させ、プロタミンのメチル化修飾の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
PRMT1ノックアウトマウスから精子を採取、精子クロマチンに含まれるプロタミンタンパク質のアルギニンメチル化状態の解析を計画した。PRMT1遺伝子の全身性破壊は致死となる。そこで、精子特異的ノックアウトマウスを得るために、胎児期の始原生殖細胞で発現するTNAP (tissue-nonspecific alkaline phosphatase)遺伝子の制御下にCreが発現するマウスと、PRMT1のfloxedアレルをもつマウスの交配を行うことで、精子でPRMT1が欠損するマウスを作出した。しかしながら、同時期にTNAP-Creマウス用いて実施した他の実験において、Cre-loxP組換え反応の効率が十分ではない可能性が生じたため、他の組織特異的ドライバーマウスの検討を行うために実験の進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、精子形成のなるべく早い時期に発現し、PRMT1遺伝子を効率よく欠損できるドライバーマウスを選別する。同時に、精子特異的にゲノム編集を誘導するための実験系(ベクター)の検討を開始する。ノックアウトマウスから残存精子を採取し、ヌクレオプラスミンを処理することで、精子クロマチンからプロタミンタンパク質を遊離させて、回収する。同プロタミンタンパク質のアルギニンメチル化状態を、ウエスタンブロッティング、及び質量分析により解析し、野生型マウス由来プロタミンと比較する。また、ノックアウトマウスを交配し、胚及び産仔が得られるか、DNAメチル化状態や遺伝子発現に変化があるかを解析する。
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