研究課題
挑戦的研究(萌芽)
Long non-coding RNA (lncRNA)は、その定義によるとタンパク質を翻訳しないRNAであるが、われわれはlncRNAと思われていたRNAから翻訳される新規ポリペプチドを多数同定した。それら新規ポリペプチドのうち、同一遺伝子座の第1エキソンが異なる2つのアイソフォームから翻訳される2つの新規ポリペプチドに着目して解析を進めていくことにした。これらポリペプチドはどちらもVDACと非常に強く結合しており、ポリペプチドを欠損するマウスは雄性不妊を示した。本課題では、この新規ポリペプチドがVDACをどのように制御しているのかという詳細な分子機構を明らかにしていくことを目標とする。
われわれは、long non-coding RNAと思われていたRNAから翻訳される新規ポリペプチドである、KastorとPolluksを同定した。これらはどちらもVDAC3と非常に強く結合しており、KastorとPolluks欠損するマウスは雄性不妊を示した。われわれはin vitro current trace assayなどを用いて、KastorとPolluksがVDAC3のチャネル活性に影響するかどうか検討したが、VDAC3のチャネル活性には影響しなかった。これらの結果より、Kastor/PolluksはVDAC3のチャネル活性以外の機能を制御することが示唆された。
これまでlong non-coding RNAと思われていたRNAが、実はKastorとPolluksという2種類の新規ポリペプチドを産生し、それらが精子ミトコンドリアの形態制御を担っていることを明らかにした。KastorとPolluksは共にヒトを含む哺乳類に広く保存されており、これらの生物では、共通した機能を持つと考えられる。精巣特異的な遺伝子の機能解析は、男性不妊の原因解明だけでなく、これらを標的とした避妊薬の開発への展開が期待される。
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