研究課題/領域番号 |
20K21412
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小金澤 雅之 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (10302085)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | Drosophila / fruitless / 求愛行動 / 行動進化 / ショウジョウバエ |
研究開始時の研究の概要 |
求愛行動パターンの多くは種特異的で、種分化の原動力ともなりうる。求愛行動パターンはどのように進化してきたのだろうか?ショウジョウバエ神経系の性差形成はfruitless (fru) 遺伝子が司っており、fru発現神経回路が求愛行動の実現に中心的な役割を果たしていることがキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)を用いた研究により明らかとされてきた。本研究では、求愛行動パターンが大きく異なる2種のショウジョウバエを用いて、性差を持つ神経回路形成に関わるfru遺伝子のcis配列およびtrans因子の変化が、求愛行動パターンの進化ので基盤であることの実証を目指す。
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研究実績の概要 |
ショウジョウバエ神経系の性差形成はfruitless (fru) 遺伝子が司っている。本研究は、fru遺伝子の発現制御配列の変化などによってfru発現神経回路の接続が変化することが求愛行動パターンの種特異性を生み出すと想定している。研究に先立ち、D. subobscuraのfru遺伝子の5'上流配列にGAL4遺伝子を連結した人工遺伝子(= sub-fru-GAL4)をD. melanogasterに導入したトランスジェニックハエを利用し、sub-fru-GAL4発現ニューロン群の強制活性化を行うと、D. subobscuraの求愛に特徴的な婚姻贈呈様の大きな吻伸展が誘導されることを見出し、この行動を誘起した原因ニューロン(Kissニューロン)を同定していた。本年度は、Kissニューロンの神経回路上での位置関係を明確にするために、固定状態で吻部の動きを明瞭に観察できる実験系を構築し、上流で機能していると想定されるニューロンを活性化して誘導される吻伸展が、Kissニューロンの機能阻害によって抑制されるか否かを検討した。その結果、求愛行動解発の最上位中枢であるfru発現P1ニューロンを含むdoublesex発現ニューロンの活性化で誘導される吻伸展は、Kissニューロンの阻害によって顕著に抑制されることが明らかとなった。一方、摂食行動を引き起こす末梢甘味受容ニューロンであるGr5a発現ニューロンの活性化に誘導される吻伸展はKissニューロンの阻害によって影響を受けなかった。これらの結果はKissニューロンが求愛行動に伴う吻進展の制御に特化していることを強く示唆している。さらに名古屋大・田中良弥博士との共同研究により、Kissニューロンを標識するGAL4ドライバーをD. subobscuraゲノムに挿入したトランスジェニック系統を確立し、その機能解析も継続して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度まではKissニューロンのシナプス伝達を阻害した個体の求愛行動や摂食行動を自由行動下で解析してきた。本年度は、固定状態で吻部の動きを明瞭に観察できる実験系を構築し、吻伸展を誘導するニューロンの活性化とKissニューロンの阻害を組み合わせて、Kissニューロンの神経回路上での位置関係を解析した。自由行動下での解析に比べて、吻伸展が明確に観察できるこの実験系により、Kissニューロンが求愛行動に伴う吻進展の制御に「特化」している可能性をより強く示すことができた。さらに、Kissニューロン標識配列を持つGAL4ドライバーをゲノム編集技術によりD. subobscuraゲノムに導入した系統を作成し、標識されるニューロンを人為的活性化した際の行動を調べたが、D. melanogasterで観察されたほどの強い吻伸展は誘導されなず、さらに標識レベルも極めて低いことも判明した。今年度はD. subobscuraに導入したトランスジーンは、D.melanogasterの配列をそのまま利用したものであることから、基本的な発現レベルが低かった可能性がある。D. subobscuraの該当配列を使用したトランスジーンの導入を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
D. subobscuraを用いた研究として、Kissニューロン標識配列を持つGAL4ドライバーを挿入されたトランスジェニック系統の機能解析を行ったが、明確な発現シグナルが観察されないという結果であった。これは使用したKissニューロン標識配列がD. melanogasterのものであったことから発現レベルが低かった可能性がある。そこで、D. subobscura自身の配列を使ったトランスジェニック系統を新たに作出し再度の機能解析することに集中する。D. melanogasterを用いた研究としては、固定状態で吻部の動きを明瞭に観察できる実験系を利用して、①上流候補ニューロンをTrpA1などで興奮させた上でKissニューロンのシナプス伝達阻害実験を行う、②Kissニューロンを強制活性化した上で下流候補ニューロンの機能阻害実験を行い、Kissニューロンの上流および下流に位置するニューロン群をさらに詳しく特定する。
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