研究課題/領域番号 |
20K21448
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 真也 京都大学, 高等研究院, 准教授 (40585767)
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研究分担者 |
伊谷 原一 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (70396224)
新宅 勇太 京都大学, 霊長類研究所, 特定研究員 (90706855)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 野生ボノボ / 森林ーサバンナ混交環境 / 環境適応 / 類人猿 / 人類進化 / 社会行動 / カメラトラップ / フィールド認知実験 / 認知実験 / 協力の進化 / ボノボ / サバンナ‐森林混交環境 / 協力社会 / フィールド認知科学 |
研究開始時の研究の概要 |
ボノボもチンパンジーもヒトの最近縁種だが、両者には行動・社会にさまざまな相違点がみられることがわかってきた。しかし、この違いが生まれた要因についてはほとんど解明されていない。その理由に、野生ボノボの調査地が非常に限られているという問題がある。そこで、チンパンジー研究の後塵を拝するボノボ研究を盛り上げるべく、野生ボノボの野外調査地を新たに確立する。これまでほとんど研究されてこなかった乾燥環境に住むボノボの社会を解明し、他の熱帯多雨林に住むボノボとの比較、さらには他の類人猿社会との比較を通して、ヒトを含む大型類人猿の社会と環境の相互作用ならびに進化の道筋を明らかにする。
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研究実績の概要 |
野生ボノボの調査地を新規開拓し、研究を軌道に乗せるという非常に挑戦的な試みに取り組んでいる。ボノボ生息域の最西端、コンゴ民主共和国バリ地区の野生ボノボ2集団を主対象とし、森林-サバンナ混交環境における野生ボノボの行動研究をおこなう体制を整えてきた。すでにカウンターパートとなる現地NGO・研究機関と協議を進め、MOUを締結し、現地協力者の力を借りながら野生ボノボ集団の人付けを進め、個体識別に成功している。ただし、コロナ禍の影響で、日本人が現地に渡航しての研究は2020年から中断していた。 今年度は、2名の研究分担者が3年ぶりに渡航することができ、現地での研究再開に向けて準備をおこなった。野生ボノボ個体の確認とともに、現地カウンターパートとの交渉・現地アシスタントとの今後の方針打ち合わせ等をおこなった。対象集団の個体数が減少しているため、新たな人付け群での研究の可能性も検討した。また、これまでに現地協力者とともに収集した現地情報、植生データ、およびボノボの行動・遊動域データを入手し、分析を進めている。トラップカメラによるビデオデータの分析も進めており、今後の詳細な行動データの蓄積・分析により、野生ボノボの乾燥環境への適応、および社会行動の変化を明らかにしたい。また、依然コロナ禍の影響が残っており海外渡航に制約があったため、飼育ボノボ(および比較対象としてチンパンジー)を対象とした観察・実験研究をおこない、野生でみられる行動を認知科学的視点から理解するアプローチ・および今後の野生個体を対象としたフィールド実験の予備実験もおこなった。これら飼育下の研究と自然環境下での研究をシームレスに結ぶ研究手法の開発をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ禍のため、2020年~2021年に現地に渡航できなかった影響は大きい。本2022年度にはようやく渡航することができ、少し遅れを取り戻しはしたが、予定よりは遅れていると言わざるを得ない。しかし同時に、現地協力者の協力もあり、ある程度データを入手でき、分析を進めることができている。また、現地に渡航できない代替研究として、日本国内での飼育ボノボを対象とした観察・実験研究をおこない、認知科学的アプローチも取り入れている。ボノボの生理・認知・行動を理解することは、今後の現地調査にも有用な知見をもたらすと期待できる。現地協力者・機関と連絡を取り合い、コロナ禍が終息ししだい現地へ渡航して現地調査を再開できるよう、今後の研究体制についての協議を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍も(すくなくとも渡航制限という点では)収束しつつあるので、海外での調査を再開する。同時に、海外の研究者との連携を強化することで、コロナ禍のような不測の事態が起こっても海外調査地でのデータ収集がおこなえる新しい体制作りに取り組む。実際、日本人研究者が現地に滞在しなくても野生ボノボの行動データを収集できる体制が構築できつつある。このようなデータを日本で受け取り、分析し、フィードバックして現地の研究・保全活動に役立てるというシステムを築きたい。同時に、現地国の研究者養成にも貢献したい。現地人の現地人による現地人のための野生類人猿研究を根付かせない限り、類人猿のフィールド研究は継続しえないだろう。知の植民地支配的関係を脱し、知的簒奪を避けるためにも、現地研究者の育成および対等・相利的な協力関係の構築は必須であると考える。そのための基盤作りをおこなう。 今回のコロナ禍を契機に、野生類人猿の野外調査は大きな転換点を迎えていると言えるが、この転換はコロナ禍以前に本研究計画で目指していたものであり、研究の方針に変更はない。①先端テクノロジーを用い、②国際共同研究の拠点として整備する。これら二つを転換の柱とし、本研究がモデルケースとなり、類人猿の野外研究に変革をもたらすべく、引き続き努力する。 加えて、飼育ボノボを対象とした観察・実験研究も進める。飼育下から得られた知見を野外調査に活かし、野生ボノボの観察から得られた問い・仮説を飼育下で検証するというポジティブな研究ループの構築に尽力する。
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