研究課題
挑戦的研究(萌芽)
CaMKIIのCa2+依存性液-液相分離がシナプス可塑性の根源たるメカニズムを担っているのではないかという発想に至った。そこで、本研究ではCaMKIIがCa2+により活性化されると他の蛋白質とLLPSを起こすことで、シナプス活動依存的なシナプス局所への蛋白質の移行と濃縮を起こすという新たな仮説を立てた。この実証のため、本研究を遂行していく。
記憶とは一時的な情報を脳内に保存する脳機能ですが、脳内の分子が何らかの変化をすると考えられています。しかしそれがどのような変化かはわかっていませんし、体内の分子は常に別の分子と入れ替わっているため、記憶を一生涯保つこともできるのは不思議でした。我々は、学習時の刺激により脳内のタンパク質が集合体を形成することを明らかにしました。脳細胞の中は水で満たされていますが、この集合体はあたかも水に浮かぶ油のように細胞内の水から自発的に分離し集合していました。こうして分子たち自身が自分の居場所を記憶することで分子の入れ替わりを可能にし、私たちは記憶を一生涯保つことができるのです。
私たち人類は知識や技術を記憶することで文明を築き、大切な人の顔や出来事を記憶することで日常を過ごしています。この新発見の機構を応用することで、アルツハイマー病などの治療ができるのではないかと期待しています。記憶は人間を人間たらしめる最も重要な能力ですが、わかっていることは多くありません。加齢・病気・事故により記憶を失ってしまうことは、肉体の損傷と同じかあるいはもっと大きな悲しみを伴います。また、過去の悲しい記憶に囚われて前向きに生きられなくなることもあります。私たちは記憶形成の分子機構の研究を通じて、人間がより人間らしく生活できる世界を実現したいと願っています。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 備考 (3件)
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