研究課題
挑戦的研究(萌芽)
近年、ヒト胚では発生初期からランダムな遺伝子変異が頻繁に起きており、その変異により生じるモザイクが先天性疾患に関わることが明らかにされた。しかし、発生期に生じた変異がどのようなプロセスを経て疾患を引き起こすのかは不明である。一方で我々は最近、胚が変異細胞を除去するシステムを有することを発見しており、このシステムが変異モザイクの出現を抑制し、疾患を予防する能力があると推測している。そこで本研究では、モザイク疾患モデルゼブラフィッシュを作製・解析することでモザイク疾患と変異細胞除去機構の関係と、モザイク疾患の発症プロセスを分子・細胞・個体レベルで解明する。
本研究では、ゼブラフィッシュをモデルに疾患と不良細胞除去機構の関係の解明を目指した。まず、ゼブラフィッシュ稚魚上皮に出現した前がん細胞が隣接細胞に感知されて細胞老化を誘導されて増殖活性を抑制され、体外に物理的に押し出されることを発見した。また、p53変異を持つ上皮やDNAダメージが蓄積した上皮では、前がん細胞は排除されずに生存し、隣接正常細胞に増殖あるいは二次的な細胞老化を誘導して初期の腫瘍を誘導することを発見した。このように、発生期に生じた不良細胞を隣接細胞が感知・排除する新たなメカニズムを明らかにし、さらに、追加変異や環境因子がこの排除機構を抑制し、疾患発症を駆動することを明らかにした。
ゼブラフィッシュを用いたイメージング解析により、新たな疾患発症機構を明らかにした。これは、発生学のみならず医学においても重要な発見である。また、近年、動物愛護の考え方から哺乳類モデルを使った制限が徐々に制限され始めているが、本成果は非哺乳類モデルの医学研究における有用性を示す重要な成果と言える。
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