研究課題
挑戦的研究(萌芽)
慢性的な感染を特徴とする寄生虫は、宿主適応を生存の必須条件とする。一方、我々の生体防御機構も寄生虫感染という選択圧によって形成されてきた。我々と寄生虫は共進化を遂げたパートナーであり、寄生虫が宿主から一方的に恩恵を受けるのではなく、宿主も寄生虫から恩恵を受けることができると考えられる。代表的な例として、寄生虫が免疫を制御する分子機構を明らかにすれば、がんやアレルギーといった免疫関連疾患を制御する薬剤の開発に応用可能である。本研究ではマクロファージ(Mφ)寄生性原虫であるリーシュマニア原虫がもつMφの殺原虫能の抑制能力や液性免疫誘導能力に焦点を当て、免疫制御を担う原虫因子の同定をめざす。
リーシュマニア原虫は、哺乳類の体内ではマクロファージ(Mφ)を宿主細胞とし、その効率的な生存のためにMφの活性化抑制を引き起こす。本研究では、リーシュマニア原虫が持つMφ制御能力に着目して、その制御を担う原虫因子を同定することを目的とした。2020年度は主に因子同定アッセイの確立に注力して、2021年度はその系を用いて原虫由来活性物質の同定を目指した。スクリーニングの結果、複数の酵素分子を同定したが、それらの組換え体を作製したところ、必ずしも当初目的としていた酵素活性が得られなかった。そのため、系の再構築を行い、再び候補因子のスクリーニングを行ったが、2021年度内に分子同定まで出来なかった。
寄生虫は宿主体内での生存のために宿主免疫応答を制御することが知られている。その分子機構を明らかにすれば、寄生虫疾患の対策はもちろんのこと、それ以外の疾患、つまりがんやアレルギーなど免疫関連疾患を制御可能な薬剤の開発に貢献することも期待できる。本研究を通して、リーシュマニア原虫には宿主免疫応答を修飾する物質が複数あること、そしてそれらはスクリーニングで同定可能であることを示した点で、将来への発展性も期待できる成果と言える。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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