研究課題
挑戦的研究(萌芽)
エクソソームが標的細胞に取り込まれないと機能しないという古典的概念を覆す現象「標的細胞に取り込まれることなく、体液中に存在する酵素、分泌型リン脂質加水分解酵素(sPLA2)と反応し、強力な生理活性物質をエクソソーム上で産生することによって生物学的効果を発揮しうる」の細胞での効果とその分子機序、癌における生物学的意義を解明し、新しいエクソソームバイオロジーを構築する。
本研究では、悪性リンパ腫組織中の腫瘍随伴マクロファージ(TAM)から分泌されるsPLA2が腫瘍細胞由来EVのリン脂質を分解することを証明しました。さらに、この分解により「細胞への取り込まれやすさ」や「免疫抑制効果」などのEVの機能が飛躍的に向上し、さまざまな生命現象が誘導されることが分かりました。このとき、EVリン脂質の分解産物であるリゾリン脂質などが細胞にシグナルを伝達しているという、これまでのEV生物学にはない新規作動メカニズムを介することを発見しました。
本研究ではリンパ腫由来EVのみならず他のがん細胞由来EVもsPLA2により分解されることを証明し、sPLA2-EV軸は腫瘍形成において共通の現象であることを明らかにしました。今後はこのsPLA2-EV軸が新たな「免疫チェックポイント」として、がん治療のための新しい薬物標的となることが期待されます。また本研究で証明されたsPLA2によるEV機能の増強効果から、過去に幸谷グループで報告した「組織保護・抗炎症作用を持つEV」などのさまざまな種類のEVが持つ固有の能力をsPLA2が増強するのではないかという仮説の検証も現在行っており、今後は治療的応用への発展も期待されます
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 3件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 10件) 産業財産権 (2件)
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