研究課題/領域番号 |
20K21552
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
|
研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
戸村 道夫 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (30314321)
|
研究分担者 |
守屋 大樹 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (30759759)
楠本 豊 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (40252689)
岩崎 正幸 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70790913)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | 慢性骨髄性白血病 / 急性転化 / 白血病幹細胞 / 細胞動態 / 細胞周期 |
研究開始時の研究の概要 |
通常の急性白血病治療法に抵抗性の、慢性骨髄性白血病から急性転化した急性白血病の白血病幹細胞を中心に、分化段階に伴う白血病細胞の全身レベルでの局在、動態・細胞周期、および長期滞在ニッチの変化を、独自に確立した蛍光および生物発光タンパク質を用いた最先端の新規評価系を駆使して解明する。そして、得られた情報から急性転化期の白血病幹細胞分画を同定、性状解析により白血病幹細胞の維持に必須な分子シグナル経路およびその制御に関与する因子を同定し、白血病幹細胞を治療標的とする新規標的治療法の開発基盤の確立を目指す。
|
研究実績の概要 |
当研究は、急性転化後の白血病幹細胞および白血病細胞の全身レベルでの分化・動態・細胞周期情報を取得し、取得した情報をもとに細胞を分画し、分画間の分子発現情報比較から急性転化後の白血病幹細胞の性状を明らかにし、さらに新規の治療標的分子を見出すことを目的としている。 令和3年度は、前年度に作製した急性転化後の白血病幹細胞および白血病細胞の全身レベルでの動態・細胞周期情報を取得できるBA/NH KikGRおよびBA/NH Fucci急性転化後白血病モデルマウス (ヒトCML原因遺伝子のBCR-ABL(BA)と急性骨髄性白血病への急性転化に関わるNUP98-HOXA9(NH)の両遺伝子を光変換蛍光タンパク質KikGRおよび細胞周期可視化タンパク質Fucci発現細胞に導入して作製)を用い、白血病細胞の分化依存的な全身細胞動態と細胞周期情報をフローサイトメトリーで取得し明らかにした。さらに細胞の動態情報を基に白血病幹細胞画分をソーティングする条件をBA/NH KikGR急性転化後白血病モデルで設定した。そしてソーティングした移動した細胞の幹細胞活性を半固形培地でのコロニーアッセイ、およびソーティングした細胞を移入マウスの白血病発症により確認した。 白血病幹細胞の長期滞在ニッチの可視化検出に用いる分割GFPのGRAPHICシステムのアクセプターGFPマウスの個体取得を試みたが難航している。 BA/NH KikGR急性転化後白血病モデルの骨髄細胞に、Akaluc-venusをレンチウイルスで導入し、白血病細胞のin vivo非侵襲検出の検討を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1)細胞の動態情報に基づいて分画した白血病幹細胞の遺伝子発現比較:BA/NH KikGR急性転化後白血病モデルマウスの大腿骨に紫光を照射し、骨髄細胞をマークした。24, 72時間に「骨髄に留まっている」、「骨髄に来た」、「骨髄から他の臓器に移動した」、「各組織に元々いた」細胞を区別し、各々についてGr-1, c-kit, Sca-1などの各種表面抗原の発現で分画し、分化段階依存的な白血病細胞および白血病幹細胞分画の細胞動態を明らかにした。72時間後においても照射骨髄から他骨髄、脾臓に移行した細胞を検出出来できた。移動した白血病幹細胞細胞分画が幹細胞活性を有することを、半固形培地でのコロニー形成能、および亜致死量放射線照射マウスに移入後の白血病発症により確認した。 2)白血病幹細胞の長期滞在ニッチの可視化検出:当研究に用いる分割GFPのGRAPHICシステムのマウスについて、ドナーGFP発現BA/NH発現白血病細胞は正常c-kit陽性細胞に遺伝子導入することで準備可能であるが、長期滞在ニッチの可視化にはアクセプターGFPマウス個体が必須である。そこで、マウス個体の取得を試み続けたが当マウスは妊娠出産率がとても低く、個体が得られないため取得を断念した。 3) Akaluc-Akalumineによる極少数白血病細胞のin vivo非侵襲検出:BA/NH KikGRの骨髄細胞に、Akaluc-venusをレンチウイルスで導入して、Akaluc-venus 高発現細胞をソーティング後、亜致死量の照射線照射マウスに移入した。白血病を発症後、骨髄細胞を解析するとAkaluc高発現細胞が10%程度まで減少してしまったが、同条件のマウスに、Akalucの基質であるAkalumine を投与して暗箱中で観察し、Akaluc-Akalumineによる白血病細胞のin vivoイメージングの撮像ができた。
|
今後の研究の推進方策 |
1) 細胞の動態情報に基づいて分画した白血病幹細胞の遺伝子発現比較: BA/NH KikGR急性転化後白血病モデルマウスの大腿骨に紫光を照射して骨髄細胞をマークして72時間後に、「骨髄に留まっている」、「骨髄に来た」、「骨髄から他の骨髄に移動した」、「骨髄から脾臓に移動した」、「脾臓に元々いた」細胞を昨年度に設定した染色パネルを用いて、幹細胞含有画分をソーティングする。その後、RNA-seqによるバルクレベルでの網羅的遺伝子発現解析を実施し、特に白血病幹細胞の骨髄での停留に関わる分子に着目して解析する。さらにRNA-seqの結果を元に絞った細胞画分(「骨髄に留まっている」、「骨髄から他の骨髄に移動した」、「骨髄から脾臓に移動した」を想定している)について単細胞 RNAseqを実施し、急性転化期の白血病幹細胞の多分子発現の性状と細胞動態の相関を明らかにする。得られた情報を基に白血病幹細胞の維持に必須な経路およびその制御に関与する因子の同定を目指す。 2)白血病幹細胞の長期滞在ニッチの可視化検出:当研究に用いる分割GFPのGRAPHICシステムのアクセプターGFPマウスについて、マーカー用蛍光タンパク質mCherryの核内高発現が個体の維持を困難にしていると考えられるため、tdTomatoアクセプターGFPマウスの作製を試みる。 3) Akaluc-Akalumineによる極少数白血病細胞のin vivo非侵襲検出:ソーティングしたAkaluc-venus 高発現細胞の移入にも拘わらず発症時での高発現細胞の頻度低下は、ソーティングにより除ききれなかった僅かに含まれるAkaluc-venusのdull-negative細胞がAkaluc-venus highの細胞よりも早く増殖するためである可能性を考えている。そこで、BA/NH発現c-kit細胞を作製後、Akaluc-venusを導入、さらにAkaluc-venus 高発現細胞のシングルセルピックアップにより、Akaluc-venusのdull-negative細胞を全く含まない細胞を準備し検討を進める。
|