研究課題/領域番号 |
20K21586
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分52:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
秦野 伸二 東海大学, 医学部, 教授 (60281375)
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研究分担者 |
木村 啓志 東海大学, 工学部, 教授 (40533625)
大友 麻子 東海大学, 医学部, 講師 (50535226)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 血液脳関門 / 標的分子シグナル系 / マイクロ流体デバイス / 治療薬 |
研究開始時の研究の概要 |
血液脳関門(blood-brain barrier; BBB)は、脳血管系循環血液と脳組織との間の物理的バリアであり、脳組織内に毒性を有する様々な分子・物質・ウィルス等から脳組織を保護するために重要な役割を果たしている。しかし、一方でBBB透過性の低さのため、これまでに開発された多くの神経疾患治療薬は適正濃度で脳内に到達できず、その有効性が十分に発揮されないという疾患治療上の重大な問題が生じている。本研究は、我々のこれまでの研究により新たに見出されたBBB透過性調節候補因子に注目し、既成概念を打破する新たな原理・手法による新規脳内薬物デリバリー法の開発を目指すものである。
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研究実績の概要 |
血液脳関門(blood-brain barrier; BBB)は、脳血管系循環血液と脳組織との間の物理的バリアであり、脳組織内に毒性を有する様々な分子・物質・ウイルス等から脳組織を保護するために重要な役割を果たしている。しかし、一方でBBB透過性の低さのため、これまでに開発された多くの神経疾患治療薬は適正濃度で脳内に到達できず、その有効性が十分に発揮されないという疾患治療上の重大な問題が生じている。したがって、脳腫瘍を含めた脳神経系疾患治療薬の開発に際しては、多くの薬剤のBBBを介した脳内への高効率なデリバリー法について、より革新的な原理に基づく新たな方法の開発が待たれている。本研究は、我々のこれまでの研究により新たに見出された2種類のBBB透過性調節候補因子alpha-2-HS-glycoprotein(AHSG)および hemopexin(HPX)に注目し、新たな原理・手法による新規脳内薬物デリバリー法の開発を目指すものである。本研究では、研究期間に、1)AHSG及びHPXによる細胞内分子反応系変動の包括的解析研究、2)マイクロ流体デバイスを用いたBBB模倣型細胞培養系の確立、の2項目についての研究を遂行する計画である。研究初年度である2020年度は、コロナウイルス感染対策による影響を大きく受けたため、研究への取り組みが大幅に遅れることになった。研究3年目である令和4年度は、細胞外血清因子であるAHSGとHPXを用いた神経細胞死抑制への効果を検証するため、神経細胞培養系の確立と精製度の高いリコンビナントタンパク質の作製を中心に実施した。今後も当初の研究計画に従って2つの研究テーマに関する研究を遂行する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、研究初年度である令和2年度の8月以降、コロナウイルス感染対策による影響を大きく受けたため、研究への取り組みが大幅に遅れた。研究2年度以降は一定の対策しつつ、研究を軌道に乗せることを第一優先とした。研究計画自体については修正及び変更の必要はない。従って、今後も当初の研究計画に従って2つの研究テーマに関する研究を遂行する計画である。 1.AHSG及びHPXによる細胞内分子反応系変動の包括的解析: 該当年度の研究については、研究計画の先行研究の再現実験を行うための神経細胞培養系の改良(新たに導入した培養神経細胞の分化条件と酸化ストレス負荷量を確定した。さらに、神経培養細胞実験用いるAHSGおよびHPXの大腸菌によるリコンビナントタンパク質の大量調製を昨年度に引き続き行い、精製度の高いタンパク質サンプルの調製を行った。 2.マイクロ流体デバイスを用いたBBB模倣型細胞培養系の確立:該当年度は細胞培養実験の進捗が遅れているため、上記項目1の実験に重点を置いたため、マイクロ流体デバイスを用いたBBB模倣型細胞培養系の確立において具体的に進捗させることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、研究初年度におけるコロナウイルス感染対策のため研究進捗が大幅に遅れている。研究計画自体については、修正及び変更の必要はないが、当初の予定した3年間の研究期間では目標達成が極めて困難と判断し、研究期間を延長して引き続き課題に取り組み計画である。 1.AHSG及びHPXによる細胞内分子反応系変動の包括的解析:培養液に精製したAHSG及びHPXを添加した場合と両者を免疫的手法で除去した血清を用いた場合での、培養細胞におけるトランスクリプトーム解析及びプロテオミクス解析を行い、各種シグナル系分子群の変動・動態解析を行う。次に同定した細胞内変動因子のRNA干渉による遺伝子発現阻害あるいは過剰発現により、AHSG及びHPX依存性の生理・薬理効果をもたらす分子シグナル系を明らかにする。さらに、分子シグナル系の最上流因子を同定し、新たなBBB透過性調節候補標的分子の特定を目指す。 2.マイクロ流体デバイスを用いたBBB模倣型細胞培養系の確立:血管を模倣したマイクロ流路と、上皮系細胞、グリア細胞、及び神経細胞の連結培養を可能とする3つの独立培養チャンバーを基本構造とするデバイスの作製を行う。研究が順調に進んだ場合は、設計したBBB模倣型培養システムでの安定した長期培養を可能とするため、デバイス設計及び培養条件の最適化を図る。また、デバイス上で再構築したBBBモデルを用いて、AHSG及びHPXの生理・薬理的作用、すなわち細胞外AHSG及びHPXが神経保護薬の薬効に及ぼす影響を明らかにする。その上で、AHSG及びHPX非存在下で、新規同定候補因子の人為的操作による神経保護薬の薬効及び神経細胞内への取り込みを検証する。
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