研究課題
挑戦的研究(萌芽)
放射線被ばくによって癌が発生するのは明らかであるが、あるひとつの癌が放射線で引き起こされたものか、その他の原因で起きたものかを区別する方法は今のところない。放射線はクラスター損傷と呼ばれる複雑な異常をDNAに引き起こし、マイクロホモロジーを伴う欠失や逆位を生じさせるとされるが、これらを全ゲノムレベルで解析する手法は今までなかった。本研究では、様々な線量の放射線を照射し樹立したHPRT変異細胞クローンと、新規技術であるロングリードシークエンシングを用い、上記の欠失や逆位を全ゲノムレベルで解析し、放射線刻印とも呼べる放射線特異的なゲノム変化の有無を明らかにする。
ショートリードとロングリードを用いた次世代シークエンシングより、ヒト正常細胞における放射線被ばくによるゲノム変異として、以下の特徴が明らかになった。1 )様々なサイズの欠失が線量依存性に増加した。2) 高線量では、非常に長大な欠失(数十万からメガベース以上)が生じた。3) 欠失の両断端にホモロジー配列がないものが多かった。また、高線量では断端結合部に別の配列を含むものが多かった。4) 一塩基置換も増加したが、線量依存性はなかった。5) 一塩基置換には、酸化損傷を示唆する変異シグネチャーが含まれていた。ただし、放射線被ばくに完全に特異的な変異の同定には至らなかった。
DNA配列決定法の技術的な進歩により、DNAの配列変化をゲノムワイドに調べることが可能となってきた。放射線被ばくは、発がんリスクを上昇させることは疫学的に明らかであり、放射線によるゲノム変異がその誘因であると考えられている。本研究において、ヒト正常培養細胞で、放射線によって生じるゲノム変異の特徴の多くが詳細に明らかになった。これらの異常が、発癌の第一歩となる可能性が高い。本研究成果は、放射線による生物学的影響、遺伝子異常、発癌などの他の研究にも活かせる基盤的データとなると思われる。
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すべて 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 9件、 査読あり 19件、 オープンアクセス 14件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 7件)
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