研究課題/領域番号 |
20K21738
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | クロットバイオプシー / COPD / 血餅 / サイトカイン / PM2.5 |
研究開始時の研究の概要 |
健康影響を評価する際、検査法としては専ら血液検査に頼る部分が大きいものの、サンプルの収集時に様々な制約がかかり、繰り返しの生体試料を同一患者から収集することは難しい。そこで血清調製時に沈殿として捨てられていた血餅(クロット)に着目したクロットバイオプシーの開発を試みる。用いる利点は、上記の廃物利用的な部分の他に、血餅に含まれるタンパク質とmiRNAの両方を使用できる点である。本課題では、国民・世界的な関心事であるタバコによるCOPD(慢性の肺炎症)モデルにおける炎症タンパクとmiRNAの関係をクロットバイオプシーを用い証明し、その後種々の健康影響評価法の確立へ応用していく挑戦的課題である。
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研究実績の概要 |
これまでに、血餅を冷凍した冷凍血餅と、即時調整した試料を比較しても、冷凍による解析に与える影響がないことがわかっている。また血餅を血餅溶解液と混合し、血餅に含まれている血液由来成分を抽出して種々のタンパク質を解析することを観察していた。本年度は実際に肺の炎症を起こさせた状態で、これらの解析ができるかを検討した。肺の炎症モデルとして、始めに抗がん剤であるブレオマイシン誘導想起肺炎症モデルを用いた。ブレオマイシンは長期投与で肺の線維化が起きるが、その前の炎症初期段階(投与後3日目)で解剖し、肺胞洗浄液と血餅溶解液、二次リンパ組織である脾臓から脾臓細胞を調製した。ブレオマイシン投与後3日目の肺胞洗浄液中には、炎症性サイトカインであるIL-6やケモカインであるMCP-1が検出され、炎症モデルとして成立していることを確認した。興味深いことに脾臓細胞のConA反応性も亢進しており、これは新たな免疫学的研究の争点となるかもしれないと考えられた。この炎症モデルから得られた血餅(クロット)では、炎症時に活性化される転写因子NF-κBのリン酸化が、対照群と比べ亢進していることがウエスタンブロット法により確認された。また、NF-κBの転写活性(DNA結合能)を検討するため血餅溶解液を用いてゲルシフトアッセイを行ったところ、確かにブレオマイシン処理群でNF-κBのDNA結合能が亢進していることも観察された。このことは、血餅溶解液は転写因子の活性を保持したまま、保存できていることを示唆しているものと考えられる。2つ目の炎症もでるとして、タバコ抽出物を気管内投与するCOPDのモデルマウスを作成した。ブレオマイシン処理マウスと同様に、血餅(クロット)中のNF-κBなどは検出できており、詳細な分子の挙動を精査・検討中である。 以上から、クロットバイオプシー法の広範囲に及ぶ有用性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、この研究課題のクロットバイオプシー方法部分を用いて、特願2021-041239で特許申請している。そのタイミングで学会発表も行い、14回JBF(Japan Bioanalysis Forum)シンポジウムではポスター賞を受賞するなど、企業の研究者からもその反響は大きかった。
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今後の研究の推進方策 |
確立したクロットバイオプシーの方法を用いて、実験動物を用いた実際の炎症モデルで評価を行い、非常に鋭敏な結果が得られることがわかった。最終的なモデルはタバコなどに曝露された際におこる慢性閉塞性肺疾患(COPD)を想定しているため、タバコ抽出物の気管内投与によるタバコ肺炎症モデルを詳細に検討している段階である。
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