研究課題/領域番号 |
20K21782
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩下 武史 北海道大学, 情報基盤センター, 客員教授 (30324685)
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研究分担者 |
深谷 猛 北海道大学, 情報基盤センター, 准教授 (30633846)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 高性能計算 / 計算科学 / 線形反復法 / 整数演算 / 反復改良法 / FDTD法 / 整数演算命令 / ステンシル計算 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,次世代計算機の研究開発を支援することを目的として,整数演算のみを用いた解析の実現性に関する研究開発を行う.具体的に,様々なものづくりやICTにおいて必要となる線形ソルバ,ステンシル計算を対象として,これらの整数演算実装を研究する.代表的な線形ソルバであるクリロフ部分空間反復法を対象として,反復改良法を援用することで,従来の浮動小数点数に基づく解析と同程度の精度を整数演算(固定小数点数演算)により実現する方策を研究する.また,反復型ステンシル計算の整数演算による実装についても研究を行う.
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研究実績の概要 |
2020~2022年度において,線形反復ソルバの主要な計算部分,具体的には疎行列ベクトル積,内積演算,各種の行列・ベクトル処理を整数命令のみで実装することを可能とした.また,代表的な反復型ステンシル計算であるFDTD(Finite Difference Time Domain)法について,整数演算(固定小数点演算)のみを用いて,解析を行う方法について研究を行い,解析対象となる物理空間を複数の部分領域に分割し,部分領域ごとに異なるスケーリングファクタを用いることで,各領域内の物理量を与えられたビット幅の整数(固定小数点数)で表現する方式を考案し,その有効性について評価を行った.また,次世代の計算デバイスでは,高性能な整数演算処理はSIMD型の整数演算命令として実装される可能性がある.そこで,線形反復法を対象として,その代表的な前処理手法であるILU分解前処理をSIMD演算を前提として高速化する方法を考案し,性能評価を行った.
2023年度には,高性能な線形ソルバとして知られるマルチグリッド法を前処理とする線形反復ソルバの整数演算に基づく実装法について研究を行った.また,これまでに開発した整数演算に基づく線形反復ソルバと連携可能な,線形反復ソルバの収束性改善手法である誤差ベクトルのサンプリングに基づく手法について研究を進め,非対称な係数行列向けの手法を開発し,国際学術論文誌において報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では,整数演算に基づく線形反復法ソルバと反復型ステンシル計算に関する研究開発を進める予定としている.このうち,まず2020~2021年度において,代表的な線形反復法ソルバであるGMRES法について,整数演算命令による実装方式を新たに開発し,性能評価を実施した.本成果について,国際会議発表を行ったところ,国際的に大きな注目が得られ,フランス,ソルボンヌ大学が主導するプロジェクトから招待講演の依頼を受けた.また,2021年度には,混合精度演算技術に関する最新のレビュー論文にも本研究の成果が引用された.さらに,2022年度には,線形反復法ソルバにおいて,SIMD演算命令を活用するための新しい前処理手法を考案し,国際学術論文誌に発表した.また,2023年度には,マルチグリッド法の整数演算による実装方式を進めると共に,これまでに開発したソルバと連携可能な線形反復法の収束性改善手法について成果発表を行った.
線形反復法ソルバに関する研究と並行し,2022年度には,反復型ステンシル計算の整数演算実装について研究開発を行い,その有効性について検証を行った.
このように,本研究は当初の想定通りの成果が得られ,その国際的反響は当初の想定以上となっている.
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今後の研究の推進方策 |
整数演算に基づくマルチグリッド法の実装方式については,実装,性能評価を進め,論文や国際会議における成果発表に結び付けたいと考えている.
また,開発した手法やソルバについて,具体的な応用分野での検証についても検討を行いたいと考えている.
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