研究課題/領域番号 |
20K21785
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長尾 大道 東京大学, 地震研究所, 准教授 (80435833)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | データ同化 / 4次元変分法 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / レプリカ交換モンテカルロ法 / 地震波伝播 / 不確実性評価 / 粒子フィルタ / Ginzburg-Landau方程式 / フェーズフィールドモデル |
研究開始時の研究の概要 |
理論に基づくモデルと、観測・実験に基づくデータを比較することが、対象の特性の把握や予測をする上で極めて重要であることは論をまたない。今日の大規模モデル・大容量データ時代において、両者の融合という必然的な要請に応える計算技術が「データ同化」である。データ同化は逐次型と非逐次型とに大別され、前者は大規模モデルに適しているが実装の手間が大きく、後者は実装は容易だが中・小規模モデルにしか適さない。そこで本研究では、現実的な計算時間と計算機資源で実行可能な、逐次・非逐次融合型データ同化手法の開発に挑戦する。また、結晶成長モデルおよび地震波動伝播モデルへ実装することにより、その性能を評価する。
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研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、現実的な計算時間と計算機資源で実行可能な、逐次型と非逐次型を融合したハイブリッド型データ同化手法の開発に挑戦することである。逐次型データ同化とは、数値モデルからあらかじめ生成した複数のシナリオを観測データが入力されるたびに再構成する手段であり、非逐次型データ同化とは、数値モデルから生成した単一のシナリオを観測データに適合するように最適化する手段である。2022年度までに、ハイブリッド型データ同化手法として4次元変分法に乱択アルゴリズムによる前処理を加えたものを提案し、大規模地震波動場データ同化における不確実性評価において、前処理がない既存方法よりも計算時間を10%以下に抑えることが可能であることを示した。 2023年度は、波動方程式特有の数理構造を利用することで、フォワードモデルとアジョイントモデルの計算量および必要メモリ量を大幅に削減する手法を開発した。具体的には、対象の波動方程式に対応するアジョイントモデルが"局所的にほぼ"線形系であることに着目し、元来非線形系では計算量的に利用困難な陰的解法を線形系と同程度の計算量で計算可能なアルゴリズムを開発し、適用することで計算不安定性を回避する。これにより時間刻みの縛りから解放され、時間刻みを大きくとれるようになったことにより、大幅な計算量およびメモリ量の削減を実現した。本提案手法を、現実の地下構造を考慮し地下方向へ完全吸収境界条件を課した1次元モデルへ適用したところ、既存の手法に比べ数十倍程度の高速化が実現された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の目標であるハイブリッド型データ同化手法のアルゴリズムは、ほぼ完成しつつある。ただし、地震波伝播シミュレーションコードへの開発手法の実装を担当する研究員が2021年度上半期に退職した影響で、予定していたスケジュールからは1年以上遅れた状態となっている。その後、新たな研究協力者として研究員を雇用し、また高速化作業の一部を役務として外注することにより、本研究計画の継続的な推進に務めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となる2024年度は、これまでに開発したハイブリッド型データ同化手法、および1次元の地震波伝播シミュレーションコードへの適用例を示した内容について、国際誌に投稿する論文としてまとめる。現実的な地震波伝播シミュレーションコードへの実装については、時間を要することが予想されるため、別プロジェクトにおいて継続実施していく。
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