研究課題/領域番号 |
20K21786
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松尾 宇泰 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (90293670)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 最適化 / 数値解析 |
研究開始時の研究の概要 |
データ駆動型科学時代の計算科学は,有限個の未知パラメータを残したモデルをデータ同化などで同定しながら数値計算するパラダイムが標準的になりつつある.本研究ではこれをさらに推し進め,そもそもモデル自体が無限次元の自由度を持つ問題設定を基本とし,計算上それを有限次元近似するに過ぎないという立場により,新しい計算科学パラダイムが誕生する可能性を問う.この視座は,データ同化だけでなく,関連する最適化アルゴリズムや深層学習にも有効である可能性があり,それらも併せて探究する.
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研究実績の概要 |
本計画研究は,不確かなモデルのからむ計算科学的研究において,従前は有限次元空間におけるモデル推定(データ同化)を考えていたところ,むしろ無限次元空間におけるモデル推定(すなわち無限次元空間における最適化に基づくモデル同定)だと考えることで,より柔軟で素直な計算科学体系が表出する可能性を探究するものである. 昨年度までに,最適化手法と数値解析学の関係についての調査・検討を行った結果,特に最適化手法におけるステップ幅と数値解析学における線形安定性解析の関係について統一的な理解を得た.この理解に基づき,例えばL平滑な凸関数に対する最急降下法の収束十分条件が,数値解析学における陽的Euler法の安定性条件から簡単に導けることを指摘し,さらにこの視点から,数値解析学的に自然に期待される,硬安定な数値解法がより効率的な最適化手法を導きうることを実際の数値実験を含めて実証した.L平滑の定数が大域的に非常に大きな目的関数に対しては,この種の数値解析学的に自然な算法の方が遙かに効率が良いことを確認した.また硬安定な数値解法から得られる最適化手法について,従来の直線探索に替わる「曲線探索」手法を導入し,それにより効率の良い解法が得られることを確認した.これにより,無限次元系である偏微分方程式由来の最適化問題が効率よく解けることを数値的に確認した. 今年度は,数値解析学ではよく知られている「離散勾配」を拡張した「弱離散勾配」の概念に基づく統一的な最適化手法記述法について枠組を完成させ,機械学習国際会議にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ期ゆえ,国際交流,国際研究集会における発表等が遅れていたが,本年度,無事それらを行い,本来の目的を達しつつある.以上により,最適化と数値解析学の関係について理解を深め,無限次元最適化でも有用と思われる新しい手法・枠組を構築する,という本研究の目的は概ね達成されつつある.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はコロナ禍で研究期間の再延長を申請している. それを除けば本年度が研究期間の最終年度にあたり,無限次元最適化問題が効率よく解けるかの調査は,一定程度肯定的に確認されたと言える. また,国際研究集会における成果発表なども本年度に無事終えることができ,本研究課題の研究成果のアウトリーチもできつつある. ただし,コロナ禍による遅れにより本研究課題で得た成果についてまだまとめられておらず未発表なものもあり,再延長期間でそれらの仕上げを行う.
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