研究課題/領域番号 |
20K21885
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
木島 章文 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10389083)
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研究分担者 |
郷 健太郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (50282009)
小谷 信司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80242618)
島 弘幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40312392)
兼本 大輔 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90603332)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 個人間協応 / 眼球運動 / ネットワークモチーフ / 対人協応 / スポーツ / 視線 / 協応行為 / 協応動作 / 予見行為 |
研究開始時の研究の概要 |
ALS患者に最後まで残存する眼球運動を用いて,彼らに「息を合わせて他者とつながる環境」を提供しようと考えた.そこで眼球運動信号でボールを捕球・送球できるゲームを仮想空間に構築し,四肢を動かすことができない患者に,サッカーの3x1トリカゴドリルで他者と連携する環境を提供する.さらに彼らのパス回しを追う「鬼」エージェントとボール動作との結合強度を操作しながら,身体行為のつながりを発展・強化させる「体育の場」を提供する.こうして本来は運動機能を失いゆく患者の身体を,行為連携の社会につなぎとめる. その成果は患者のQOL向上のみならず,世界の身体教育に対してVRの新たな重要性を指し示すはずである.
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研究実績の概要 |
三者協応のボール回しシステムを構築し,大学運動競技者(国内最高水準レベルのフィールドホッケー選手)とゲーム愛好者(大学競技経験を持たない一般大学生)を対象にシステム内でゲームを行なわせた.その結果,大学生は自らの位置を盛んに移動しながらパスを回す傾向にあったが,ホッケー選手はむしろ自分の位置を動かすことなくパスを回すことでボールを奪いにくるアバターからボールを遠ざけていた.またホッケー選手のみに見られた特徴として,フィールドでのパス回しさながらに,声を掛け合いながらボールを回し合うチームワークが見られた.ボール回しゲームのパフォーマンスそのものには競技者とゲーム愛好者との間に差がなかったことから,競技者は複雑な視線動作を伴う移動-パス動作を省くことでホッケー選手が動作の効率性を上げていること,加えて言語を媒介とする意思疎通を介して連携秩序を整える彼らの心身機能が,システムの中にも十分に持ち込まれていることがわかった.こうして残存する視線・眼球運動協応でALS患者が身体の連携秩序を創発するシステムを構築するまでに至ったが,コロナ感染拡大の影響が響き,本来は助成期間の最終年度であった令和5年度内に患者への試験を行っていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
システムを軽量化・小型化し,医療機関での試験を完了する.試験において申請者らが注目するポイントは,運動競技者がシステム内のプレーで形成していた音声を介した意思疎通を患者に行わせる方法である.当然,患者には発声を期待できないことから,ゲーム愛好者が用いていた,自らが動くことで敵アバターを引きつけ開いた方向にパスを出す方略が音声の代替手段を考える手がかりになると考えている.この方略は,助成期間中に公表された先行研究(Mizawa et al., Frontiers insports and active living, 2022)で報告された,ホッケー競技中に習熟プレーヤーが用いている方略に類似している.
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今後の研究の推進方策 |
2名の健常者が行う音声のやり取りをALS患者が聞くことで,特定のパス回しの連携秩序を創発させたい.この情報収受のネットワークモチーフは理論的に定式化でき,さらにその連携パタンも予測可能である.そこで現行システム内で患者と健常者とのやりとりによる訓練を実施して,まずは健常者2名が双方向に,加えて健常者から患者が1方向に意思を伝えるシステムで立ち上がる秩序を観測し,その成り立ちを数理的に把握したい.そしてその結果をもってシステムの改良を検討する.現在想定している改良ポイントとして,例えば,ALS患者がこれから動く方向をインポーズすることで患者の意思を健常者に伝える機能を付加するなどを想定している.こうした工夫をもって,最終的には患者同士で円滑な身体連携をもてる動作環境を提案したいと考えている.
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