研究課題/領域番号 |
20K21917
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小嶋 翔 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (80880921)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 旧制高等学校 / プロテスタンティズム / ユニテリアニズム / 福音主義 / 社会事業 / セツルメント / 社会主義 / 市民 / 公共 / 宗教 / 高等教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の問題関心は、日本に於ける市民的な相互扶助社会実現の可能性を歴史的に考察することである。後発近代国家である日本では、中央集権体制下の政治的作為による近代化は進んだものの、本来その基盤となるべき市民社会形成の点では立ち遅れた。そのことは、国策としての高度福祉社会が実現した戦後においても基本的には変わらず、結果として近年の社会的諸課題への対応を困難にしていると考えられる。経済発展を前提とした国策による総中流社会が解体される中で、市民的倫理を基礎とする相互扶助社会の日本的可能性を模索することは急務である。この点で、本研究における問題関心は極めて現代的なものである。
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研究実績の概要 |
前年度までは、主たる考察対象の旧制第二高等学校・忠愛之友倶楽部(学生YMCA)の草創期、また仙台の近代教育史、キリスト教思想史、地域史(災害など)といった周辺事項の二方面に目配りしつつ網羅的な調査を行ってきたが、本年度はこれまでに得られた知見を論文としてまとめるとともに、さらに研究を深めるべき事項についてさらなる資料調査・収集とその分析作業を行った。 論文化の方では、草創期忠愛之友倶楽部に見られるキリスト教思想について、当時のキリスト教思想やキリスト教界の動向、また仙台の地域史を踏まえながら、近代日本思想史においていかに位置付けることができるかを考察した。具体的には、忠愛之友倶楽部が仙台という地方都市に存在したがために、中央のキリスト教運動とはやや事情が異なり、日本のキリスト教界の動向に左右されづらい形で外国人宣教師が学生教育を行い得たこと、明治30年代に一時的な自由主義神学の流入・影響による外国人宣教師との疎遠化が生じたものの、ほどなく学生の思想傾向がオーソドックスな福音主義信仰に回帰し、またその過程では貧困や災害といった実社会的課題に取り組む外国人宣教師からの影響も強かったと考えられることを明らかにした。以上は本研究課題の基幹となる成果であり、すでに脱稿のうえ所属する学会の機関誌に投稿し、査読結果の通知を待っている状態である。 その後は、外国人宣教師による宗教教育と社会事業・社会実践の関係性を具体的事例からさらに検証するため、彼らが出身国アメリカの支援者に向けて活動を周知・報告する目的で発行していた広報誌などの英字資料を調査し、読解を進めている。具体的には、東北学院の宣教師W・E・ホーイを中心に教派横断的な活動紹介の場となっていた雑誌"The Japan Evangelist"などである。これらについては、本年度内にその成果を学会、研究会等で報告し、かつ論文化まで進めるつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の成果をまとめていく上で軸となる論文を脱稿し、学会誌に投稿できたため、その後の研究をどのように進展させていくべきかの具体的な見通しも立てられた。新型コロナウィルスの影響で学会参加や資料調査の予定を変更せざるを得ないこともあったが、可能な範囲で具体的な調査と研究を進めることができており、その成果も順を追って発表等できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
まずは現在進めている英字資料の調査・分析をさらに進めていく。上記「研究実績の概要」「現在までの進捗状況」でも触れた学会誌投稿論文は、主に高等教育に属するキリスト教学生について分析したものであったので、それを指導する外国人宣教師側の資料を読み進めていくことで、双方向的な思想的影響関係を明らかにできると考えている。これについては、既に研究報告を行う学会・研究会が決まっており、その報告の結果を踏まえて順次論文化を進める。
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