研究課題/領域番号 |
20K21922
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古川 萌 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任研究員 (90886219)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ヴァザーリ / バルディヌッチ / 美術批評 / イタリア / ルネサンス / バロック / 美術史 / ローマ / フィレンツェ / 美術教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、17世紀フィレンツェの美術鑑定家バルディヌッチの著作を取り上げ、美術制作を生業としない者による美術批評が、同時代においてどのように受容されたのかを明らかにする。 バルディヌッチの主著『素描家消息』は美術家の伝記集であるが、書き手がプロの美術家ではなく、その批評が「見る」という行為のみによって成り立っている点において特異である。この著作を通して、美術を語ることにおける当事者性が批評においてどのように機能したのか探り、17世紀イタリアで「美術家」という存在が担った役割を浮かび上がらせたい。その際、すでに16世紀後半に孤児院で美術教育の実践が見られたことも考慮に入れ、前世紀との接続を試みる。
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研究実績の概要 |
今年度は、前年度に引き続きヴァザーリとバルディヌッチのあいだの関連を探り、その影響関係やその後のフィレンツェ美術史に与えたインパクトについての研究を行った。具体的には、美術、とりわけ素描において、それが「芸術家の手の痕跡」であるという考え方を取り上げ、それがヴァザーリからバルディヌッチに至る流れのなかでどのように受け継がれていたのか検討した。まずバルディヌッチの主著『チマブーエ以降の素描美術家たちの消息』の成立の歴史的背景を概観し、彼が作品を直接観察することに強い関心を抱いていたことを確認し、次に、ヴァザーリのいわゆる「素描集」を取り上げ、彼がいかに画家の手の痕跡が残る素描や版画の収集に傾倒していたか明らかにした。最後に、ヴァザーリの「素描集」がバルディヌッチに与えた影響を考察し、手の痕跡としての素描という考え方がどのように継承されているか跡付けた。本研究は、学会誌『美学』に投稿し、掲載済みである。 また、フィレンツェ美術史の連続性を誇示する装置として、フィレンツェ大聖堂に残る芸術家記念碑群を取り上げ、それがいかにメディチ家によるパトロネージを都市内外に印象付ける機能を担っていたかについて、2023年7月にイギリス・リバプールで開催されたルネサンス学会で発表し、意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヴァザーリ研究のまとめに時間がかかり、予定していたバルディヌッチの著作の分析が遅れているため、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はバルディヌッチの著作の分析にフォーカスし、フィレンツェ内のみならず、同時代のローマやボローニャ、ヴェネツィアの事例と比較することで、その特異性を浮き彫りにする。とりわけリドルフィやボスキーニに代表される16~17世紀ヴェネツィアで出版された美術批評と比較したい。その後、研究結果をまとめて学会で発表し、学会誌に投稿する。
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