研究課題
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近年の契丹語文献の解読の進展は、今までほとんど未知であった遼代漢語音へのアクセスを可能にした。本研究では、これまでの研究代表者の契丹語解読の成果を基盤とし、契丹語と漢語との対音資料を主材料にして両言語の音韻体系の再構を行なう。遼代漢語についてはその全面的な再構を行なって漢語音韻史における位置づけを明らかにし、さらにその成果を基に、契丹語文献のみからでは分からない契丹語の音韻的特徴を明らかにして契丹語再構の精緻化を推し進め、契丹語学・漢語学の両分野に対して双方向的に貢献することを目指す。
本研究課題では、10~12世紀に遼朝(契丹国)内で使用された契丹語と遼代漢語という密接不可分な2つの言語の音韻体系をより正確に理解するために、契丹語文献中の漢語表記と漢字文献中の契丹語表記の分析を行ない、遼代漢語の声調体系と契丹語の音調的特徴を明らかにした。それとともに、契丹語語彙を記録した漢字文献の流伝に関わる諸問題を検討し、文献学的に興味深い新たな知見を得た。
本研究によって従来十分に理解されていなかった遼代漢語の音韻体系の本格的な解明が進んだことは、この言語が現在の北京を含む地域で話されていたことを考慮するなら、現代の北京方言や標準中国語の発展過程を理解する上で非常に重要な成果となる。また、契丹文字資料のみからでは明らかにできない契丹語の音調を対音資料を用いて明らかにしたことは、「直接音声を聞くことのできない歴史上の言語の音韻を文字資料からいかにして復元するか」という困難な問題に対するひとつの解決方法を示した興味深いモデルケースであると言える。
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学会通信 漢字之窓
巻: 3(2) ページ: 52-53