研究課題/領域番号 |
20K21975
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 (2022) 京都大学 (2021) 関西大学 (2020) |
研究代表者 |
宮川 創 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, 助教 (40887345)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 古ヌビア語 / コーパス / 歴史音韻論 / 母音字 / 音価 / エジプト語史 / 歴史言語学 / コプト文字 / コプト語 / デジタル・ヒューマニティーズ / アフリカ言語学 / ヌビア / ナイル・サハラ語族 / ノビーン語 / 古代エジプト語 / 音韻論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、コプト文字で書かれた古ヌビア語の母音字重複の音価を突き止め、その結果が、研究代表者がコプト語において提示した「母音字重複=長母音説」を支持できるのかどうかを見極めるものである。母語としての使用が一旦途切れたコプト語とは異なり、古ヌビア語の末裔は現代ヌビア諸語の内のノビーン語としてエジプトやスーダンで母語話者によって話されている。そして、ノビーン語では長母音と短母音の区別がある。このことから、古ヌビア語ウェブコーパスを作成して、古ヌビア語の語彙とそれに対応するノビーン語の同源語とを比較し、古ヌビア語文献におけるコプト文字の母音字重複が現代のノビーン語の長母音に当たるか否かを分析する。
|
研究実績の概要 |
古ヌビア語の研究における大きな一歩となったコーパスの開発に関して、Vincent W.J.van Gerven Oei氏と共に手を取り合って取り組みました。van Gerven Oei氏は、古ヌビア語文法の第一人者であり、2022年にはその知識をPeetersから出版したA Reference Grammar of Old Nubianというタイトルの書籍にまとめました。我々が開発したコーパスは、2022年の8月から9月にかけてワルシャワ大学で行われた15th International Conference for Nubian Studiesで発表され、高い評価を受けました。 現在、我々はこのコーパスの更なる拡充に取り組んでおり、同時にその詳細についての論文も執筆中です。また、私は2021年度のオリエント学会で母音字の音価についての研究を発表しましたが、新たに得られた知見を含めて、2022年度の同学会でも発表を行いました。この発表は、主にコプト語の母音組織についてでしたが、同じコプト文字で母音が書かれた古ヌビア語の母音組織についても分析しました。 さらに、2022年3月からは、Vincent W.J. van Gerven Oei氏が日本学術振興会外国人特別研究員(欧米短期)として国立国語研究所に滞在しています。我々はコーパスの共同開発を進めるとともに、古ヌビア語の文法事象についての共同著作を進めています。この前段階のパイロットスタディの研究結果は、共著でELW: Evidence-based Linguistics Workshopにて発表しました。これらの研究は古ヌビア語の理解とその文法構造の解明に大いに貢献することと期待しています。 現在、開発したコーパスを用いた、古ヌビア語の母音字組織に関する論文を執筆しており、今年度中に投稿することを目指しています。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Vincent W.J. van Gerven Oei氏と共同で取り組んだ古ヌビア語のコーパス開発は、その言語研究の進展にとって重要なステップである。van Gerven Oei氏は、古ヌビア語文法について深い知識を持ち、その知識は2022年にPeetersから出版された"A Reference Grammar of Old Nubian"という書籍にまとめられている。このコーパスは我々の共同作業の成果であり、2022年の8月から9月にかけてワルシャワ大学で開催された15th International Conference for Nubian Studiesで発表され、その価値が認識された。 今後、このコーパスの拡充に向けた取り組みが続けられる予定であり、その詳細についての論文も現在執筆中である。また、私自身が2021年度のオリエント学会で発表した母音字の音価に関する研究をさらに進め、新たな発見を2022年度の同学会で発表した。その発表内容は主にコプト語の母音組織についてだったが、同じくコプト文字で母音が書かれた古ヌビア語の母音組織についても触れた。 さらに、2022年3月からVincent W.J. van Gerven Oei氏が日本学術振興会外国人特別研究員(欧米短期)として国立国語研究所に滞在している。我々は共にコーパスの共同開発を続けるとともに、古ヌビア語の文法事象に関する論文を共同執筆している。この前段階のパイロットスタディの研究結果は、共著で2022年9月のELW: Evidence-based Linguistics Workshopにて発表した。これらの研究活動は、古ヌビア語の理解深化とその文法構造の解明に対する大きな貢献となることが期待されている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、国立国語研究所にて、日本語学術振興会外国人特別研究員(欧米短期)の制度で客員研究員として在籍しているVincent W.J. van Gerven Oei氏と執筆している共同研究の論文を国際的な学術雑誌に投稿する。van Gerven Oei氏と共同で構築中の古ヌビア語タグ付きインターリニアーグロス付きコーパスをオンラインで公開する。さらに、コーパスを作成する過程で研究した古ヌビア語文献の光学文字認識の実験結果に関する論文を国際的な学術誌に単著で投稿する。さらに、単著で、古ヌビア語文献コーパスにおける、開口度が中程度の母音字の音価と母音字重複の音価の分析を論文としてまとめ、国際的な学術雑誌、もしくは、国内の学術雑誌に投稿する。
|