研究課題/領域番号 |
20K21991
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
後藤 はるか 駒澤大学, 総合教育研究部, 講師 (40751110)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | フランス20世紀文学 / フランス20世紀小説 / ナタリー・サロート / ヌーヴォー・ロマン / ジェンダー / 現代文学 / シモーヌ・ド・ボーヴォワール / フランス現代演劇 |
研究開始時の研究の概要 |
20世紀を代表する作家の一人、ナタリー・サロート(1900-1999)の個別作家研究を行う本研究は、精緻な作品分析という伝統的な研究姿勢を基本とする一方で、多様なジャンル(そして20世紀的なメディア)に亘る作家独自の試みを包括的な視点で捉えようとする点で、新たな研究方法の模索を必要とする。 本研究が目指すのは、作家の文学史的な位置づけを、初期を語る「ヌーヴォー・ロマンの作家」としてではなく、80年代以降を含む創作の全体像から捉えなおすことである。そして、そこで見出される20世紀における文学とそれへの時代の感性を、私たちの時代における文学への感性に照らし、文学の未来について考察してゆきたい。
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研究成果の概要 |
本研究は、ナタリー・サロートの文学に20世紀的な表現の特徴を検証しながら、新たな視点でその作品を捉えることを目標とした。基本となる作品分析に加え、これまで知られることのなかった自伝的情報として、アン・ジェファーソンの評伝を手がかりとし、実存的な側面からの研究も行った。 こうした研究を通して、ヌーヴォー・ロマンの作家としてカテゴライズされがちなサロートが、じっさいは、「新しい小説」を書くことを試みるのではなく、「新しい対象」を見出してゆくことを、1930年代から一貫して試み続けたのであり、さらにはその対象へ向けられる彼女の感性に21世紀的な感性の萌芽が認められるということを明示することができた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
ナタリー・サロートの実存的な情報によって、とくにピエール・ジャネからの影響やボーヴォワールとの衝突を扱ったことで、初期作品(『トロピスム』から『マルトロー』まで)について、新たな作品解釈を提示できた。また、その解釈を通して、サロートが「新たな現実性」と呼び、作品に提示してゆく対象が、21世紀の私たちが具体的に問題視するようになった事象(アイデンティティーの揺らぎ、ジェンダーやハラスメント等)に結びつくことを明らかにした。そうした事象を表現するその言葉づかいは、20世紀ならではのかたちでその文学の独自性を成していることから、その感性を育んだサロートの文学経験を分析する重要性を提示できた。
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