研究課題/領域番号 |
20K22006
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0103:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
梅木 佳代 北海道大学, 文学研究院, 特任助教 (70888750)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | オオカミ / エゾオオカミ / 北海道史 / 人と動物の関係史 / 動物観 / 新聞 / 野生動物 / 絶滅 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、明治時代以前のエゾオオカミと人の関係性を再検討することを目的とする。かつて北海道に生息したエゾオオカミは明治時代に絶滅したが、絶滅以前の人との関係性については曖昧な議論が続いており、いまだ明確化されていない面が多くある。 本研究では文献調査を通じて新たに検討・分析の対象となる事例を拡充したうえで議論に取り組む。北海道でエゾオオカミと遭遇した際の人々の思考や対応を分析し、当時のオオカミ観を把握することを目指すと同時に、北海道における人とエゾオオカミの関係性について、時期、地域、民族ごとの差違の有無を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は文献調査を通じて明治時代以前の北海道におけるエゾオオカミと人との遭遇事例を収集し、両者の関係性を再検討することを目的とする。2022年度はおもに渡島から後志地域を対象とした文献資料調査を実施し、和人・アイヌ民族それぞれの事例を収集した。 2022年度に実施した調査の成果として、家畜被害に悩まされていた牧場経営者の手記において、牧場周辺で2頭のオオカミが捕殺されたことで問題が解消したと言及されている事例など、いわゆる「狼害」の実態を探るうえで重要な情報を複数得ることができた。エゾオオカミの絶滅経緯に関わる従来の一般的な議論では、明治開拓期の北海道では多数のオオカミが群れをなして次々と牛馬を襲い、ともすれば牧場経営が成り立たなくなるほどの激しい被害をもたらしていたために、専門の制度を設けて「害獣」の根絶を目指す必要があったのだろうと論じられる場合があるが、当時の実際の状況はこれまで考えられてきたよりもかなり多様であったことを指摘できると考えている。「狼害」の実態とそれに対する人々の感情については、現生オオカミの生態や現在も世界各地で発生している実例をふまえつつ慎重に分析・考察に取り組みたい。 くわえて、2022年度は明治期の『函館新聞』について、現在閲覧可能な状態にある1878(明治11)年から1891年までのすべての紙面の調査を完了できた。明治期の新聞からエゾオオカミと人との遭遇事例や家畜被害の状況について検討する試みはおこなわれたことがなく、これまでは開拓使やお雇い外国人など施政側の視点から記述されてきたエゾオオカミとの関わりについて、民間側の視点を追加することが可能となる。この『函館新聞』の調査により得られた成果については、中間報告に該当する内容を国内学会で発表することができており、現在進めている情報整理と各事例の分析が完了次第、論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の遂行にあたり、2020・2021年度には新型コロナウイルスの感染症拡大防止措置による遅れが生じていたため、2022年度はその挽回に努めた。結果として本来は2021年度に予定していた明治期の『函館新聞』を含む道南部の調査を完了することができた。とくに明治11~24年まで10年超にわたる『函館新聞』の記事を通読できたことにより、オオカミに直接言及した記事の捕捉だけでなく、野生鳥獣を取り巻く社会状況を経時的に把握でき、視野を大きく広げることができたと考えている。 しかしながら、2020年度中の調査を見送った地域のうち、胆振、日高、十勝方面の文献調査を十分に実施することはかなわなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は引き続き前年度までに生じた遅れの挽回に努め、必要な地域の調査を完了させる。また、現在までに調査が完了している地域の事例・情報の分析を進め、その結果を中間報告として学会で報告することで、最終的な成果を論文としてまとめる準備を着実に整える。
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