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インフラの時間性に関する人類学的研究:ラオスの流れ橋の事例から

研究課題

研究課題/領域番号 20K22046
研究種目

研究活動スタート支援

配分区分基金
審査区分 0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
研究機関鹿児島大学

研究代表者

難波 美芸  鹿児島大学, グローバルセンター, 特任講師 (20883888)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2023-03-31
研究課題ステータス 交付 (2021年度)
配分額 *注記
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワードラオス / インフラストラクチャー / 気候変動 / レジリエンシー / 流れ橋 / 民俗土木 / 循環的時間 / 開発 / 時間 / 柔構造 / 環境
研究開始時の研究の概要

本研究の目的は、「近代インフラによって淘汰されていく伝統インフラ」という固定化した視点を乗り越えることである。そこで、近代的なインフラと伝統的なインフラという異なるモードのインフラへの注目から、それぞれのインフラが依拠する時間性と、それらのインフラの設置・利用から、人々の生活のリズムがどのように形作られるのかを明らかにする。人類学的手法を用いる本研究では、近年目覚ましくインフラの近代化が進められるラオスにおいて、人々が自らの手で作り出す「流れ橋」に注目した実地調査を行い、それによって流れ橋の物質性に刻まれた時間と人間活動の関係を明らかにしていく。

研究実績の概要

本研究は、中国と国境を接するラオス北部のルアンナムター県で、流れ橋(毎年雨季になり川が増水すると流失し、乾季には人々が再び設置する橋)という、環境と連関したインフラ作りの実践に光を当てることで、当該地域の生業やモビリティの変化と、国境地帯の開発によって人々が経験するグローバル化との関係を明らかにしようと試みている。
2021年度は、2020年度から引き続き新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、調査対象地域であるラオスへの渡航が困難だったため、もっぱら文献調査を進めるとともに、社会水文学を中心に、本研究に関わる隣接領域のレビューを行った。社会水文学は人間社会と水との相互影響関係と共進化の再起的なあり方に注目するものであり、人間と環境の相互作用と生成変化に注目する本研究の視点と共通する部分がある。あくまで定量的データを用い、予測を目的としている社会水文学とは目的において一致しているとはいえないものの、気候変動の時代にあって、より多くのファクターが水害や河川流域環境に影響を与える現在、河川インフラと社会、環境との関係を考える上では重要な示唆を与えるものである。2021年度はこうした視点から社会水文学のレビューを行い、水資源水循環学会研究大会で発表を行った。
加えて、気候変動時代のインフラは災害リスクに対してどのようなアプローチを持ちうるのかを探求した。本研究では2020年度にPhilosophy of Human-Technology Relations Conferenceで発表を行ったことから、その内容をもとに投稿論文を執筆し、善い技術をめぐるポスト現象学的な視点と人類学との接点を探った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウィルス感染拡大の影響によりラオスへの渡航を断念せざるを得なかった。そのため、実地調査で明らかにしようとしている部分についての研究が著しく遅れている。本研究の遂行には、調査対象とする流れ橋が作られる過程や、そこで用いられる資材の栽培・採集方法、橋の使用のされ方や、橋を作る住民たちの生活に関する現地調査を行うことが必須であるため、補助事業期間中は、各年度に一度ずつラオスへ調査渡航することを予定していた。しかし、ラオスでは新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、2020年度から現在に至るまで引き続き外国からの入国制限措置が取られている。そのため、現地への渡航を行うことが不可能となったため、2021年度は文献研究を中心に行ってきた。文献による調査は順調に進んでいるため、本研究の進捗状況はやや遅れているものと位置付けられる。

今後の研究の推進方策

ラオスへの渡航が可能となった場合には、2022年9月もしくは2023年2月にラオスへの渡航を計画し、(1)鉄道開通による村への影響と、(2)流れ橋の制作における住民の協働という2点の調査項目を設定し、参与観察を行う。2021年12月に中国雲南省からラオス首都ヴィエンチャンまでを縦断する高速鉄道が開通した。ルアンナムター県はこの国際鉄道のラオス側への入り口であり、国境地帯における開発が進められていることから、(1)の調査項目では、これに伴う村の生活と経済活動への影響等について調べる。(2)では、流れ橋の物質的特徴と、設置にあたっての協働の在り方を明らかにするため、橋作りの技術と労働、役割分担に関する詳細な記録を取る。渡航が適わない場合には、これまでの文献調査の結果をまとめるほか、ラオスにいる調査助手とのテレビカンファレンスなどを通した情報の補足を試みる。研究成果は4S(Society for Social Studies of Science)で発表し、論文として『文化人類学』 などの学術雑誌に投稿する。

報告書

(2件)
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書

研究成果

(6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Material Itineraries of Electric Tuk- Tuks: The Challenges of Green Urban Development in Laos2021

    • 著者名/発表者名
      Namba Miki
    • 雑誌名

      East Asian Science, Technology and Society: An International Journal

      巻: 15 ページ: 173-191

    • DOI

      10.1080/18752160.2021.1897737

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 技術の「善い」媒介的役割に関する人類学的研究の可能性:ポスト現象学との対話から2021

    • 著者名/発表者名
      難波美芸
    • 学会等名
      日本文化人類学会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 「人新世のインフラストラクチャー」を志向する:人類学と社会水文学の対話から2021

    • 著者名/発表者名
      難波美芸
    • 学会等名
      水文・水資源学会/日本水文科学会2021年度研究発表会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] Dealing with environment: Transitions in the Mobility and Materiality of Flexible Infrastructure2021

    • 著者名/発表者名
      Miki Namba
    • 学会等名
      IUAES (International Union of Anthropological and Ethnological Sciences)
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 「気候変動」の時代におけるインフラのテンポラリティ:「流れ橋」の巡る時間と近代インフラの流れる時間2020

    • 著者名/発表者名
      難波美芸
    • 学会等名
      第54階日本文化人類学会研究大会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] Infrastructure and Human Bodily Transformation in Automobility: To the Interdisciplinary Approach of Anthropology and Philosophy2020

    • 著者名/発表者名
      Miki Namba
    • 学会等名
      PHTR (Philosophy of Human-Technology Relations) Conference
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2020-09-29   更新日: 2022-12-28  

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