研究課題/領域番号 |
20K22053
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0105:法学およびその関連分野
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山口 真由 信州大学, 先鋭領域融合研究群社会基盤研究所, 特任教授 (50879806)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 家族法 / 親子法 / 生殖補助医療 / アメリカ法 / 英米法 / 親子関係 / デファクトピアレント |
研究開始時の研究の概要 |
親とは何か――この問いに対する法的に普遍的な答えは、いまだ与えられていない。例えば、わが国においては、両親の婚姻又は親子の血縁のいずれを重視するかによる緊張関係がある。わが国に先んじて、社会的変化に直面し、各州が競って親子法制を進化させた合衆国の親子法を題材として、普遍的な「親子の要件」を抽出することを、本研究の目的とする。その際に、婚姻と血縁に収斂すると思われている親子の要件について、それとは異なる可能性や、父と母の決定に関して異なる哲学に基づく別個の法理が形成されている可能性を検証する。
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研究実績の概要 |
「親とはなにか」その問いに対する法的に普遍的な答えを探求するのが本研究の目的である。そのために、本研究はアメリカとの比較法の手法を取る。アメリカでは、家族をめぐる社会の急激な変化に対応するため、家族法がドラスティックに変遷してきた。具体的には、子どもを産んだ者を母とし、その母と婚姻によって結ばれた者を父と定めるという伝統的なルールに、未婚の母の著しい増加に伴って子どもとの血縁を推定する方法が加えられた。さらに、精子や卵子の提供や代理懐胎などの生殖補助医療の進展によって親となる意思を基準とする方法が追加され、LGBTQ+による子育てを承認する風潮の中で実際に親として機能している者を親と定める理論が法制化された。 本研究では、母と父をより性中立的に「第一の親」「第二の親」と言い換えたうえでそれぞれに分けて要件を検討することとした。母との婚姻に加えて、子との血縁、さらに親になる意思や親としての機能と「第二の親」を定める基準は多様化の一途をたどっているように見受けられる。それでもこれらに通底する普遍的な要素の抽出を試みるために、それぞれのルールを分解し、その共通点として①親としての関係に入ることに関する母との合意、②子との継続的な親子としての関係、そして③外部から見て家族と認識されるユニットの形成という3つの要素を抽出し、これが「第二の親の要件」となるのではないかと考えた。 この研究をまとめた『アメリカにおける第二の親の決定』(弘文堂、2022年)は尾中郁夫・家族法新人奨励賞を受賞している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究においては「第二の親」の要件を検討した後に、「第一の親」の要件を調査することを予定していた。「第一の親」の要件については、子どもを産んだ女性を母と定めるというルールは厳格なものとしてアメリカにおいても維持されている。一方で、養子縁組に加えて1980年代には賛否が分かれていた代理懐胎も現代のアメリカ社会では1つのプロセスとして定着している。産みの母が法的な母とならない例外的な場合から、そこにも共通する「第一の親」の要件を抽出する試みは徐々に進んでいるものの、2023年度に子どもを出産し、産前産後に休業したこともあり、研究はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「第一の親」の要件の検討を進めたい。代理懐胎については概ね調査が進み、そこから①代理懐胎者の権利の保護、②子どもの利益の保護、そして③両者を可能にするための司法の関与という3つを代理懐胎が認められるための要件として抽出した。今後は、この観点から養子縁組の制度を分析したい。そのうえで、産みの母を法的な母にしない例外的な場合がいかなる場合に法的に許容されるかという要件を抜き出し、そこから逆説的に「第一の親」の要件を考えることを計画している。
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