研究課題/領域番号 |
20K22064
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0105:法学およびその関連分野
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
秋元 奈穂子 立教大学, 法学部, 准教授 (40517877)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 営利的言論の法理 / 情報開示規制 / 強制的営利的言論 / 情報のコモディティ化 / 情報の商品化 / 営利的言論の自由 / 広告規制 / 双方向メディア / 開示規制 / 営利的言論 / 情報化社会 / ビッグ・データ / ソーシャルメディア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アメリカにおける営利的言論の自由の法理(commercial speech doctrine)の高度情報化社会における意義と限界を検討することを目的とする。発信者と受信者の二元性を前提として、発信者による営利的な言論が受信者の情報取得・自己決定を促進するという理念の上に確立した営利的言論の自由の法理が、経済活動における集積された情報自体の商品化や、インターネットメディアにおける双方向・多元的コミュニケーションの増大といった現代的事象に対していかなる意味を持つか、法理の限界はあるかについて、文献調査、アメリカにおけるフィールド調査及び識者との意見交換をもとに明らかにする。
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研究実績の概要 |
情報をめぐる行政規制のあり方の変化と営利的言論の法理につき、①行政による商品表示規制と強制的営利的言論の関係、及び②個人情報データのマーケティング利用に伴うデータ流通規制と営利的言論との関係につきそれぞれ文献調査を中心として検討を行った。 ①については、1980年代以降に行政規制手法が行為禁止規制開示規制へと変化し、パブリック・ヘルス、金融開示規制等広い範囲で用いられるようになったことに伴い、被規制主体が強制的営利的言論の法理を用いて合憲性を争う訴訟が増加したこと、それにより、経済的規制と情報規制(営利的言論規制)が更に接近し経済規制としての実質を持つようになったことが明らかになった。そのうえで、営利的言論の法理において論争的事実の開示に関してより厳しい基準が適用されること、SDGsに見られるような経済活動の過程での倫理性や環境への配慮等、事実開示が倫理性を帯びる状況があることから、情報開示規制への制約原理として営利的言論の法理が機能し始めていることが示された。 ②については、個人情報(識別可能/識別不可能)が集積されたデータの売買等による移転に対する行政規制の拡大に対し、営利的言論の法理においても、データの特定主体間での移転行為までをも営利的言論に取り込む動きは下級審判例においても強くはないことが明らかになった。 2023年7月には、以上の研究成果につき、報告を行いフィードバックを得る機会を得た(アメリカ憲法研究会(最高裁判所))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、文献調査を中心として研究内容のまとめを行うとともに、論文執筆に従事した。また、「研究実績の概要」に記載のとおり、研究成果につき発表する機会を得、フィードバックを得るとともに、憲法問題を扱うことが多い最高裁判所調査官をつとめる裁判官から日本法に対するいかなる示唆が得られるかという観点から有益なコメントを得た。これをもとに、執筆中の論文についても修正を加えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、アメリカにおけるプロモーション規制、パブリック・ヘルスや消費者保護、金融にかかる情報開示強制に関する規制の動向につき、アメリカにおける関係する研究者、実務法曹との意見交換及びインタビューを、6月に実施する予定である(ニュー・ヨーク大学、シートン・ホール大学、及びトンプソン・コバーン法律事務所を訪問予定)。 かかるインタビュー結果を反映させ、同年度中には論文執筆を修了させて公表を目指す予定である。
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