研究課題/領域番号 |
20K22071
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0105:法学およびその関連分野
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
杉井 俊介 武庫川女子大学, 経営学部, 講師 (10878060)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | スタンディング / 原告適格 / 法律上の利益 / 法律上の争訟 / 公益擁護訴訟 / 私的法務総裁 / 米国連邦最高裁判決 / 事件・争訟性 / Sandersテスト / 行政訴訟 / 公益擁護 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、行政訴訟とりわけ取消訴訟を提起するにあたり、訴訟要件として不可欠な判断要素となる原告適格(行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」)に関し、私益擁護の性格を強く持つものと理解してきた伝統的学説を批判的に考察するとともに、公衆の利益、すなわち公益を含む形での解釈の可能性を検討するものである。その際、米国では古くから連邦最高裁が公益擁護訴訟を認めてきた点に注目し、日米の原告適格法理の比較を通じて、私益救済の枠組みに囚われない解釈論を展開する。
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研究実績の概要 |
本研究における成果の一つとして、2022年度に博士号を取得した博士学位論文(日米の公益擁護訴訟の展開 ―とくに米国におけるlost historyの考察を通じて―)があるが、2023年度は同論文を公表論文として発表すべく加筆修正することを目指した。具体的には、同論文の審査において指摘された、「私益型テスト」「公益型テスト」の定義の不備や、日米法理比較にあたって考察が不十分であった点の再検討と修正である。 上記研究の骨子は、米国における過去のスタンディング法理が私益の延長(legal rightテスト)と公益の縮小(Sandersテスト)の発想に基づくことを指摘するとともに、米国と同様の視点から日本の原告適格法理を再検討するものであった。日米の法理を同じ発想から比較することは一見無謀とも思われるかもしれないが、結果として、従来の学説が日米のスタンディング法理を全く異なるものと評価する要因の一つを説明するための新しい視点を提示できたと自負しており、意義のあるものであったと評価している。2023年度は米国法理同様の視点で日本の学説を説明するための「私益型テスト」「公益型テスト」の定義を明確化することにより、日本における議論状況を整理するとともに、米国における学説・判例のより詳細な検討と比較をするための素地を整えた。 2023年度はその成果として、関西行政法研究会において「米国における私的法務総裁の理論と公益の代表者としての訴訟の検討」の報告題目で研究発表をした。報告題目にもある私的法務総裁については、研究を進める中で単に公益擁護訴訟の理論として米国法理の発展に寄与しただけでなく、近年では弁護士報酬の当事者負担の例外として機能していることがわかった。そこで、「公益の代表者」としての機能に変遷が生じていることを指摘することにより、日本にも新たな示唆をもたらしうることを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べたように、当初の計画では2022年度の実績の一つである博士学位論文を加筆・修正したものを公表論文として2023年度中に発表する予定であったが、以下の理由で遅れが生じた。報告者の所属する研究機関には法学部がなく、法学の文献やデータベースが不十分である環境下では、他大学の資料に頼らざるを得ない。一方で、2023年度は新型コロナウイルスが第5類に移行したものの、遠距離の移動や他大学における図書館の利用に依然として支障が出ており、とりわけ研究の中心となる米国法の文献の収集に支障をきたした。その結果、米国法理の十分な分析を踏まえて日本法と比較・検討することができず、2023年度中に修正した論文を発表することが叶わなかった。そのため、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は2023年度から引き続き、公表論文の発表に向けて博士学位論文の加筆・修正を進める予定である。前述のように、日本の原告適格に関する学説・判例の再検討は概ね終了しているものの、米国におけるスタンディング法理の学説・判例の再検討は2023年度中に十分にできなかったことから、今後は米国における議論を中心に再検討する予定である。具体的には、1970年に米国のスタンディング法理に大きな変化が生じているが、過去の法理がどの程度影響を与えたのかといった考察や、比較的最近の判例・学説の調査と分析である。 なお、2023年度までは報告者の所属する研究機関に、報告者の専門分野である法学部は設置されておらず、研究のために専ら他大学の資料に頼らざるを得ない状況にあった。しかし、2024年度に法学部の設置されている研究機関に異動したことにより、研究環境が大きく改善された。2024年度はこうした環境を活かして研究を進めるとともに、同年度中にその成果を発表したいと考えている。
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