研究課題/領域番号 |
20K22072
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0106:政治学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 将史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (80882878)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 貿易選好 / 保護主義 / 一般的信頼 / 経済的利益 / 産業構造 / 第三次産業化(tertiarization) / アメリカ / 市民 / 貿易 / 世論 / 格差 |
研究開始時の研究の概要 |
なぜ近年の米国では、貿易から利益を得る人々が増えているにも拘わらず、国際貿易協定に対する市民の反発が根強いのだろうか。市民の反発の背景には「米国は貿易から損害ばかり被っている」という現実から乖離した利害認識があり、その認識が生じる原因を先行研究は明らかにできていない。そこで本研究では、〔1〕産業構造の変化で貿易の利害の不確実性が高まりリスク評価を形成する「一般的信頼」が市民の利害認識に影響するようになったこと、〔2〕格差拡大によって市民の一般的信頼が低下してきたこと、という二つの要因が複合して貿易協定への反発が高まった、という仮説を提示する。そして、計量分析と過程追跡を組み合わせて実証する。
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研究成果の概要 |
本研究の目的は、近年の米国市民の一部が、なぜ経済的利得に反して国際貿易協定に批判的になっているのか明らかにすることであった。そのために、下記の二つの要因が組み合わさって国際貿易協定への反発が高まっている、という仮説をたてて検証を行った。第一の要因は、サービス産業への移行に伴い貿易から被る経済的利害の可視性が低下して、一般的信頼(見知らぬ他者に対する信頼)が米国市民の貿易選好に強く影響するようになっていることである。第二の要因は、格差拡大の結果として米国市民の一般的信頼が長期的に低下していることである。検証の結果、格差拡大が一般的信頼低下の主因であるという部分を除き、上記の仮説は支持された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は米国市民の貿易協定に対する反発について新たな因果メカニズムとその経験的根拠を提示した。すなわち、米国におけるサービス産業への移行と一般的信頼の低下が、特に一般的信頼が低い傾向がある新たな共和党支持層において貿易協定への反発を引き起こしていることを明らかにできた。これは、国際貿易秩序を動揺させている近年の米国の保護主義について、その原因の理解と解決策の提示に貢献するものである。さらに、サービス産業への移行は先進国全体で広く見られる傾向であり、今後もし他の国でも同様の傾向が確認できれば、先進国市民の貿易選好の形成メカニズムとして重要な知見が得られると期待される。
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