研究課題/領域番号 |
20K22085
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0107:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
後藤 剛志 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 講師 (30880223)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 財政規制 / 財政規律 / 会計操作 / 自治体合併 / 公務員制度改革 / 独立財政機関 / 公共財 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は財政規律の確保のために行われている財政規制などの取り組みについて、様々な公共部門の財政規制や財政支出の状況に注目しながら分析を行い、財政規律を確保するための政策を考察する。この中でも特に地方自治体での会計操作行動や財政支出に関する規則、政府の行う公共財供給にそれぞれ焦点をあてて分析を行うことで、多角的な視点から財政規律の確保のための政策提言を行うことを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は4点の研究の進捗があった。 1点目に、本研究課題に関連する研究として実施していた合併自治体の財政規律に関する理論研究が学術誌に掲載されることとなった。この研究論文では合併自治体の過大な債券発行が財政規制によって適切なものとなる可能性についても議論を行っている。 2点目に、本研究課題に関連する研究として実施していた政府の会計操作に関する実証研究が学術誌に掲載されることになった。この研究論文では日本の自治体合併時に特別会計を使って行われた会計操作行動が、債券発行の誘因の大きさに連動して起こることを明らかとしたもので、財政規制の存在にかかわらず、会計操作が発生しうることを示した。 3点目に、本研究課題に関連する研究として、新たに公務員給与の改革が民間給与に与える影響についての研究をスタートさせることになった。この研究は当初本研究課題では想定されていなかったものであるが、前年度までに予備的に行っていた非正規公務員の研究を発展させる形で開始されたものである。日本では財政規律を確保するために公務員数と公務員給与の削減を行ってきたが、この研究はこの効果を捉えようとするもので、2006年度から2010年度までに実施された新公務員制度改革による地域手当の導入を識別戦略に用い、地域手当支給率の違いが民間給与の違いに影響するかを分析している。この研究については、厚生労働省から本研究課題を根拠としたデータ提供を受けた。 4点目に、本研究課題に関連する研究として、新たに財政再生基準への抵触が地価に与える影響についての研究をスタートさせることになった。この研究は地方自治体に新たに導入された財政再生基準に抵触した場合、それによって当該自治体の地価が下がるのかを調べるものである。この研究により、財政規制の経済状況一般へのインパクトを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の当初の計画に記載されていた、最適財政規制の問題についての研究は困難度が高く、進展がほとんど見られなかったが、それ以外の研究については査読学術誌への掲載がなされたものもあり、進捗があったと考えられる。 また当初計画にはなかった、政府の財政規律確保政策の経済一般への影響をみる研究も昨年度からスタートした。これにより財政規律確保について多面的な視点から評価することができ、当初計画で考えられた以上の成果を得ることができると考えられる。 しかしながら、こうした新しい研究はまだ成果が出ていない初期段階のものであり、また当初計画に盛り込んでいた研究の困難性が判明したことから、研究は順調に推移しているものの、計画以上の進捗があるとは言えないと考え、このような進捗状況の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性としては、良い意味で当初の研究計画にとらわれず、財政規制にかかわる学術上の課題について研究を進める方針であり、具体的に3つの方向性で研究を進めている。 1つ目は新たにスタートした研究の着実な遂行である。特に財政規律確保のための公務員人件費削減が民間給与に与える効果についての研究は本研究課題を根拠に厚生労働省からデータ提供を頂いているため、本研究課題終了までに分析・論文執筆を進める必要がある。 2つ目は財政規制について、当初計画で考えていた時間不整合性などの問題以外の問題に着目し、多面的な効果を調べていくというものである。財政規制の導入が経済にさまざまな面で影響することは近年の研究の進展から知られてきており、日本でもこのような研究を進めることは財政規制の評価を進める上で欠かせないと思われる。 3つ目は研究でサーベイした内容を体系的にまとめることである。これは長期的な課題であるが、本研究課題遂行に際して得た知識を体系的にまとめることで、研究成果を実務へ応用できるようにし、社会実装を進めたい。
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